がん免疫療法コラム
自分らしく生きるためのサバイバーシップ
がん治療後の社会生活への支援
がん治療薬の進化に伴い、がん患者の生存率が改善され、がんは不治の病から慢性疾患としての側面を持つようになりました。がん治療が終わったとしても身体的、精神的、社会的なフォローを必要とする患者も増えています。
がんの治療するときには生存率の向上に集中していたため、がん患者が抱える様々な課題については放置されてきた反省から社会全体と協力して、患者の課題を克服するサバイバーシップという考えが注目されるようになりました。
身体的問題のアプローチ
がんによる症状や手術や抗がん剤の副作用による身体的な影響は、治療が終わっても苦痛が伴う場合もあります。がんの治療が終わっても生活は続き、通常の生活を送るためにも身体的苦痛に対するケアを受けることが重要です。
がん治療が終わった後の身体的問題に対するアプローチとして以下のものがあります。
・がん治療後の妊娠、出産を目指すために妊孕性温存
・がん治療による身体機能低下へリハビリ
・見た目の変化に対するアピアランスケア
・化学療法による一時的な認知機能障害に対するケア
身体的問題は、治療が終わった後の就労などにも影響するため、身体的問題の早めに対処した方が良いでしょう。
精神的問題のアプローチ
がんの告知を受けた時の精神的衝撃やがん治療を受けている時に感じる死への恐怖は、患者に大きなストレスをもたらします。患者の多くが、不眠や適応障害を発症します。がんの治療が終わったとしても継続的な精神ケアは、自分らしく生きるためにも重要です。精神科医や臨床心理士によるカウンセリングや抗不安薬など薬物治療は、必要に応じて受けることも精神的問題のアプローチと言えます。
医療職以外のサポートも重要
がんと診断されてからの医療費の問題から、治療が終わってから仕事へ復帰したときの支援など社会的な問題に対するサポートは、がん治療が終わった後の生活維持のためにも非常に重要です。がんの診断を受けた直後、治療に専念するために離職するケースも多いため、就労支援などの医療以外のサポートも重要なケアの一つです。また、がんと診断されたとき、死というものを意識し、自分のこの世での存在価値などスピリチュアル的な問題を考える場合があります。これらの問題に対して病院によってはチャプレン(臨床宗教師)がサポートしています。
がん治療が終わった患者の生活を支えるためには医療職だけでは、問題の解決ができない場面も増えてきます。そのため、一般社会の専門家のサポートや連携が求められます。
参考文献
がんサバイバーシップ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/67/2/67_137/_pdf/-char/ja
根治・予防・共生 ~患者・社会と協働するがん研究~がん研究 10か年戦略,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/pdf/gan10y.pdf