がん免疫療法コラム
がん治療を助ける緩和ケア
がんに伴う苦痛を取り除く緩和ケア
緩和ケアは、がんによって伴う身体的、心理社会的、スピリチュアル的な問題に対して的確な評価と対処を行うことで苦痛を予防し、和らげることで患者のQOL(生活の質)を向上させることを目的としています。
がん性疼痛に対する医療用麻薬の投与など身体的苦痛以外にも治療や将来に対する不安を和らげるためにカウンセリングなど精神的苦痛、死生観に寄り添うなどスピリチュアル的苦痛へのアプローチなど緩和ケアでは、さまざまな方向から患者の苦痛を和らげるケアが行われます。
終末期医療とは異なる
終末期医療(ターミナルケア)は、治療によって病気の回復が期待できない、死期が近いと複数の医師が客観的に判断した時から始まります。しかし、緩和ケアは、終末医療とは違い、がんと診断された時から始まります。
緩和ケアには、がんと診断された時の精神的ショックに対するカウンセリングや経済的な問題に対するソーシャルワーカーとの相談など幅広いケアが存在し、がんの治療をサポートします。がん性疼痛に対して使用される医療用麻薬などの鎮痛剤は、終末期医療や緩和ケアなどでも使われるため共通するケアも存在しますが、緩和ケアの方が総合的にがんに伴う苦痛をケアしていくイメージです。
緩和ケアによって生存率の上昇することも
アメリカの病院で行われた進行非小細胞肺がんと診断された患者に対する調査では、緩和ケアを受けていない患者の中間生存期間が8.9ヶ月だったのに対して、緩和ケアを受けた患者では中間生存期間が11.6ヶ月も延長したことが報告されました。緩和ケアによって約3ヶ月も生存期間の延長がみられました。また、生存期間の延長以外にも、うつなどの症状についても改善しており、QOLが上昇したことも報告されています。
緩和ケアは早期に開始することが重要
緩和ケアは、終末期医療とは異なり、がんと診断された時から開始することでさまざまな苦痛を軽減できます。また、がんと診断された患者以外にも患者の家族に対するメンタルケアも緩和ケアに含まれています。患者の生活や治療などさまざまな面で家族との協力が必要になるため、家族へのケアも非常に重要です。
患者の苦痛を取り除く緩和ケアは、生存期間を延長する効果も期待されており、治療期間が長期間続くがんでは非常に重要なサポートです。がんには多種多様な支援、治療が存在するのでがんと診断された1人で悩まずにさまざまなことを相談してみましょう。
新版緩和ケアガイドブック,日本医師会
https://www.med.or.jp/dl-med/etc/cancer/cancer_care_1-3.pdf
転移のある肺がんに対する早期からの緩和ケアの有効性
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000wxts-att/2r9852000000wxye.pdf
終末期医療に関するガイドライン〜よりよい終末期を迎えるために〜,公益社団法人全日本病院協会