がん免疫療法コラム

シンボルマーク
パターン
パターン

遺伝子治療とは?②

  1. はじめに

前回に続き、がんの遺伝子治療について述べていきます。がん遺伝子治療は正常細胞に悪影響を与えずに、全身のがん細胞に効果を発揮することを目標とした新しい治療法です。

 

  1. 遺伝子治療の2つのアプローチ

遺伝子治療には主に2つのアプローチがあります。一つは、体内(in vivo)遺伝子治療で、遺伝子を組み込んだベクター(遺伝子を細胞へ運ぶための手段)を患者の体内に直接投与します。もう一つは体外(ex vivo)遺伝子治療で、患者から取り出した細胞に体外で遺伝子を導入し、その後、遺伝子を導入した細胞を患者に戻します。

現在、体内遺伝子治療の腫瘍溶解性ウイルス、体外遺伝子治療の遺伝子改変T細胞療法(CAR-T細胞療法)が臨床応用されえています。

 

  1. 腫瘍溶解ウイルス

腫瘍溶解ウイルスは腫瘍細胞で特異性の高いシグナル伝達経路や特異的に発現の高い分子の利用を考えて、ウイルス遺伝子の一部を欠損させ、正常細胞では増殖せず腫瘍細胞でのみ増殖できるように組み換えをしたウイルスになります。最初の承認は、ヘルペスウイルス遺伝子を2つ欠損させて腫瘍細胞で選択的に増殖させるように改変した腫瘍溶解ウイルスであるT-VEC(Talimogen Laherparepvec)であり、2015年10月にFDAによってメラノーマ治療薬として承認されました。

日本初の遺伝子治療薬もあります。デリタクトは東京大学医科学研究所で開発され、3つの遺伝子を除去した単純ヘルペスウイルスで、悪性度の高い膠芽腫(グリオブラストーマ)に対する有効性があります。

 

  1. 遺伝子改変T細胞療法(CAR-T細胞療法)

遺伝子改変T細胞療法(CAR-T療法)は、患者さん自身のT細胞を取り出してがん細胞を攻撃できるよう人口のT細胞受容体であるCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子の導入を行い、再び、点滴で静脈内に投与するという革新的な治療法です。

現在は、B細胞の腫瘍抗原CD19を認識する抗体の遺伝子を持ったリンパ腫や白血病に限られますが、いずれの臨床試験においても100%に近い成功率を挙げています。2019年3月にCAR-T細胞が白血病治療薬としてNovartis社のキムリアが本邦で承認されています。

  1. まとめ

今回はがん遺伝子治療について紹介しました。さらに、これらの治療は化学療法、放射線療法、抗PD-1抗体との併用療法により治療効果を増強できることが多くの動物実験では証明されており、今後のさらなる臨床応用に期待が寄せられています。

しかし、ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療臨床研究はまだ実現していないのが現状です。また、現行のゲノム編集法の課題も見出され、さらに効率が良く安全性の高い技術へと開発・研究が進められています。

 

出典:Journal of Clinical Experimental Medicine (IGAKU NO AYUMI) Vol.285 No.5

資料請求・お問い合わせ

専任のスタッフが丁寧に対応いたします。ご不明な点などございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

この情報をシェアする
シンボルマーク

よく読まれている記事

TOP