がん免疫療法コラム

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遺伝子治療とは?①

  1. はじめに

“遺伝子治療”という言葉を聞いたことはありますでしょうか。

遺伝子治療とは、異常な遺伝子を持っているため機能不全に陥っている細胞の欠陥を修復・修正することで病気を治療する手法です。中でも、がん遺伝子治療は正常細胞に悪影響を与えずに、全身のがん細胞に効果を発揮することを目標とした新しい治療方法であり、がん医療の現場で注目されています。

 

  1. 遺伝子治療の変遷

1990年に世界初の遺伝子治療として、免疫不全症候群の一つであるADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症に対する酵素補充療法の遺伝子治療が実施されました。これが遺伝子治療の幕開けとされています。その後、約30年が経過し、複数の遺伝子治療が臨床応用されています。近年では特に遺伝子治療の研究開発が活発化し、急速に進行しています。遺伝子治療の標的疾患も“がん”や遺伝性疾患・代謝疾患のみならず、循環器疾患、神経変性疾患、感染症にまで多岐にわたっています。

最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大により、遺伝子治療技術を基に作られたmRNAワクチンが迅速に開発されたことは記憶に新しいのではないでしょうか。この例からもわかるように、遺伝子治療は新たな治療法の開発という形で大きな役割を果たしています。

 

  1. 治療技術の進歩

遺伝子治療のモダリティにも大きな変化が生まれています。遺伝子の運搬を担うウイルスベクターに加えて、核酸医薬やドラッグデリバリーシステム(DSS)とのコンビネーションも多様化してきています。

また、遺伝子変異を修正できるゲノム編集法も次々と開発され、特に2020年のノーベル化学賞受賞で注目された「CRISPR/Cas9法」の開発とともに、遺伝子を操作する遺伝子治療の機運が一気に高まっています。従来の遺伝子治療は、遺伝子を補充・付加する治療法であり、異常遺伝子は残ったままであることや、遺伝子の組入部位はランダムであるため、遺伝子の発現調整ができず、がん化の恐れがあることなどの限界がありました。それに対し、CRISPR/Cas9法などのゲノム編集では遺伝子の変異を直接修正できるため、より精密な治療が可能となると期待されています。

  1. まとめ

今回は遺伝子治療について解説しました。次回は、がんの遺伝子治療についてクローズアップしていきます。

出典:Journal of Clinical Experimental Medicine (IGAKU NO AYUMI) Vol.285 No.5

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