がん免疫療法コラム
希少がんについて②
- はじめに
前回に続いて、「希少がん」について解説しています。
- 希少がん(骨肉腫)の診療実態
骨肉腫という病名を聞いたことがある方は多いと思いますが、骨肉腫も希少がんの1種になります。
“肉腫”とは骨、筋肉、脂肪、血管などの軟部組織から発生する悪性腫瘍です。上皮系由来の“癌”と比べて発生頻度が低いため十分な研究がなされておらず、診断や治療が難しいと言われています。
多くのがん患者さんを診療している大きな大学病院や地域がんセンターにおいても、1年間に新たに診療する骨肉腫の患者さんの数は平均1.8人に過ぎません(2019年全国骨・軟部腫瘍登録より)。
- 希少がんの課題
このように希少がんでは患者さんの数が少ないことから、その他患者数が多いがんと比較して、最適な治療法に関したデータが少ないことは確かです。
がん診療に欠かせない正確な病理診断が希少がんでは時として困難な場合もありますし、希少がんの知識が一般的ではないため、診断・治療開始が遅れることがあります。また、希少がんに対する治療ガイドラインが十分に整備されていない場合や、希少がんに対する専門家が限られており、適切な治療が受けられない場合もあります
- 治療開発が進まない原因
希少がんには、治療開発が遅れがちであるという現状が指摘されています。稀な病気であるために、治療薬に対してどの程度のニーズがあるか不明瞭であることも開発が進まない理由の1つです。その他にも、疾患モデル(細胞・動物)がない、症例が少ないために臨床試験や治験のスピードが遅い、国内だけでの大規模臨床試験が実施できない、などの様々な問題点があります。また、試験で有効性が認められたとしても、患者数の少ない治療薬の製品化に着手する製薬企業が出てこない可能性も考えられます。
- 最後に
希少がんには多くの課題がありますが、その時点で入手可能ながんに対するデータ(エビデンス)をもとに、最適な療養に向けた検討を行うことが重要です。
適切な診療や治療開発の促進、患者サポートの充実などにより、より良い医療環境を整えることが求められます。これからも、希少がんに関する情報や認識を広め、研究や治療法の進歩につなげていくことが大切です。
【参考文献】
厚生労働省委託事業「希少がん対策ワークショップ報告書」
国立がん研究センターがん対策情報センター