がん免疫療法コラム
希少がんについて①
- はじめに
みなさんは「希少がん」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
希少がんとは、人口10万人あたり6例未満の稀ながん種の総称です。
患者数が多い代表的な5つのがん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がん)を“主要5大がん”と呼ぶことがありますが、その対極にある“がん”と捉えるとよいでしょう。
今回はこの“希少がん”について2回に分けて解説しています。
- 「希少がん」の一例
例えば、次のようながん腫が「希少がん」に分類されます。
全身の肉腫(軟部肉腫、骨の肉腫)、脳の膠芽腫(グリオーマ)、眼の腫瘍(網膜芽細胞腫)、中皮腫、神経内分泌腫瘍、小児がん、希少な乳がん・婦人科がん、腺様嚢胞がん、原発不明がん、胚細胞腫瘍、尿膜管がん、副腎皮質がん、褐色細胞腫、パラガングリオーマ、GIST(消化管間質腫瘍)、メラノーマ(欧米では頻度の高いがんですが、日本では希少がんに相当します)
- 「希少がん」の定義
ここに挙げた以外にも多数あり、200種類近い疾患が希少がんに分類されています。
個々の希少がんはいずれも、がん全体の1%にも満たない稀な腫瘍です。しかし、全ての希少がんを足し合わせると、がん全体の15~22%にも達します。
どのようながん種が希少がんに当たるか、国内にはまだ正確なリストはありません。現時点では希少がんかどうかの目安としては、ヨーロッパから報告されているList of Rare Cancersが参考になります。
- 希少がん治療における課題
症例数が非常に少ないために、診療・受療上の課題が他に比べて大きいと言えます。
まず一つに、その他患者数が多いがんと比較して、最適な治療法に関したデータが少ないことが挙げられます。また、医師の診療経験・教育機会の不足、治療開発が進まないなどの理由もあって、一般的ながんに比べて治療成績が悪いことが大きな問題となっています。
実際に2017年の欧州からの報告では、一般的ながん5年生存率は63.5%であるのに対し、希少がんでは48.5%であることが示されており、同様の傾向は日本でも認められます。
- さいごに
今回は希少がんについて解説しました。
次回は希少がんの治療における課題についてクローズアップしていきます。
出典:Casali PG, Trama A. Rationale of the rare cancer list: a consensus paper from the Joint Action on Rare Cancers(JARC)of the European Union(EU). ESMO Open 2020 ; 5 : e000666.