がん免疫療法コラム

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がん悪液質の治療について

  1. はじめに

前回に続いて、今回はがん悪液質の治療について解説していきます。

 

  1. がん悪液質の治療

がん悪液質に対する治療は①薬物療法と②非薬物療法(栄養療法や運動療法)に分けられます。がん悪液質の主症状である食欲不振や体重減少に対しては、これまではステロイド剤やプロゲステロン剤が用いられましたが、副作用や投与量が問題でした。

そんななか、2021年4月に世界に先駆けて本邦でグレリン様作動薬であるアナモレリンが、抗がん悪液質作用を示す薬剤として承認発売されました。現在は悪液質を合併した非小細胞がん・胃がん・膵がん・大腸がんで保険承認されており、日常臨床で用いられています。

 

  1. 薬物治療

ちなみにグレリン(ghrelin)とは胃から分泌される内因性の食欲ホルモンで、1999年に本邦で発見されました。グレリンは摂食亢進、体重増加、脂肪蓄積などの生理作用をもち、肥満症やメタボリックシンドロームの原因になることでも知られています。

しかし、グレリンは静注投与が必要であったのが欠点でした。それに代わって開発されたのが1日1回の経口投与で効果が得られるアナモレリンになります。

 

  1. アナモレリンの作用機序

アナモレリンは、グレリン受容体であるGHS-R1a(成長ホルモン放出促進因子受容体タイプ1a)を作動して作用します。この受容体は多くの組織に分布しており、脳下垂体では成長ホルモン(GH)の放出、視床下部では食欲の亢進に関与しています。また、脳下垂体から分泌された成長ホルモンは肝臓からインスリン様成長因子-1(IGF-1)を分泌させ、筋肉の蛋白合成を促進します。

その有効性については国内で実施されている第Ⅱ相臨床試験で確認されています。

 

  1. 薬物以外の治療

ただし、アナモレリンの服用のみでは筋力の回復にはつながらないことに注意が必要です。がん患者のリハビリや運動療法・栄養療法の工夫がさらに必要となります。その実現に向けて医師のみならず、薬剤師、看護師、管理栄養士、理学療法士等の多職種チームによる介入が不可欠と考えられています。

また、栄養療法に関してアナモレリン塩酸塩の登場に加え、外来化学療法患者を対象にした管理栄養士による栄養指導に加算が認められたことも追い風になっています。

  1. 最後に

がん悪液質患者の予後やQOLの改善は簡単なことではありません。

悪液質に伴う様々な課題を解決するためには、薬物療法、運動療法、栄養療法を組み合わせた包括的治療が必要になります。

 

参考文献
京府医大誌131(10),823-830,2022. doi:10.32206/jkpum.131.10.823
Pietra C, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2014; 5(4): 329-337.

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