がん免疫療法コラム

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がんの不均一性とは

はじめに

通常、臨床においてがんは臓器,組織,腫瘍の大きさや転移の有無といったがんの進行度によって分類されます。それに応じて、臨床試験や治療実績のエビデンスに基づいた最適な治療法が選択されています。ここで言うエビデンスというのはあくまで統計情報であり、統計的にもっとも成功率の高い治療方法が選択されています。しかし、実際には治療効果は個人ごとに大きく異なり、副作用の大きさも患者ごとに異なっています。これはがんの不均一性や多様性によるものだと考えられています。

 

二つの不均一性

がんは増殖・浸潤・転移の過程で遺伝子的・微小環境的な多様性を獲得し、不均一性が存在することが知られています。p53やKRASといったドライバー遺伝子と呼ばれる癌遺伝子の変異によってがん細胞は増殖していきます。その過程でゲノム上に様々な異常が蓄積されますが、変異の組み合わせは細胞によって異なります。そのため、がん細胞は多様な集団から構成されており、それぞれのがん細胞が持つ変異の組み合わせは、患者間によってことなります。これを腫瘍間不均一性(inter-tumor heterogeneity)と呼びます。また、ある患者の持つがん細胞間によっても異なり、これを腫瘍内不均一性(intra-tumor heterogeneity)と呼びます。

 

がんの不均一性によって生じる問題点

このような特性はがん治療において大きな障壁となります。例えば、ある患者には非常によく効く薬剤が,別の患者では効果がないということがあります。また、不均一な細胞集団中に薬剤耐性を持つサブクローンが存在する場合、薬剤治療後に生き残った当該サブクローンが増殖してしまうことで、薬剤耐性を持ったがんの再発につながるとも考えられています(クローン進化)。

 

これまでにわかっていること

がんの研究においては、次世代シーケンサーの登場により大規模なゲノム解析が行われています。The Cancer Genome Atlas(TCGA)に代表されるがんゲノムシーケンシングプロジェクトによって、多くのがん腫のシーケンスデータがデータベースに蓄積されており、誰もがこのデータを使用することができるようになりました。個人間の変異の違いに基づく腫瘍間不均一性を解明するため、このような大規模データを用いた解析がこれまで盛んに行われてきました。その結果、新たなドライバー遺伝子が同定されたり、新たながんのサブタイプ分類が提案されています。

今後の課題

がん不均一性を治療前から予測・評価することはがんの個別化診断・治療に繋がると考えられていますが、がん不均一性の定量方法については研究段階であり、実臨床では実用化されていません。

 

出典:
Oncotarget, 2018, Vol. 9, (No. 102), pp: 37689-3
生物工学会誌 第94巻 第2号 82頁

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