がん免疫療法コラム

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Vol.198 新たな分子標的薬:KRAS G12C阻害薬について

  1. はじめに

がんは遺伝子の異常が原因で生じますが、その中で最も有名な遺伝子がKRAS遺伝子変異になります(がん遺伝子)。このKRAS変異をターゲットにする薬剤は長らくありませんでしたが、ソトラシブという薬剤が2021年5月にアメリカで、2022年1月に本邦で承認されました。今回はこのKRAS変異について解説していきたいと思います。

 

  1. KRAS遺伝子変異とがん

KRASタンパクは細胞の増殖をコントロールするスイッチの役割をもつタンパク質で、細胞が増殖するための信号(シグナル)を伝える、重要な「スイッチ」の役割をもっています。しかし、このKRAS遺伝子に変異が生じると、作られるタンパク質もおかしくなり、細胞増殖が制御不能となってしまいます。いわゆる細胞のがん化です。実際にKRAS遺伝子変異は、全がんのおよそ3分の1に認められる変化になります。

 

  1. KRAS変異

1982年にKRAS変異が発見されてから現在に至るまで約40年もの間、異常なKRASタンパク質が成長シグナルを送らないようにブロックする薬剤の開発が試みられましたが、なかなか成功には至りませんでした。それゆえ、「undruggable(薬にすることができない)」とまで言われていました。

 

  1. KRAS 12C阻害剤の登場

そして、ついに特定の変異だけをターゲットにするKRAS標的薬が登場することになりました。KRAS変異には様々な種類がありますが、その中でも特定のKRAS G12Cという変異に対して有効な薬剤ソトラシブ(ルマケラス)が開発されました。このKRAS G12C変異は非小細胞肺がん患者の約13%、大腸がん患者の3%、その他の固形がん患者の1~3%に認められます。

冒頭で述べたようにKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行非小細胞肺癌を対象にソトラシブが承認されており、さらにもう一つのKRAS 12C阻害剤であるアダグラシブ(KRAZATI)においても非小細胞肺がん、大腸がん、膵臓がん、子宮内膜がんに対して有望な結果を示していることが報告されています。

 

  1. 今後の展望

ただし、KRAS G12C変異を有するすべての腫瘍にこれらの薬剤が奏効するわけではなく、また、奏効した場合するでもほどなく耐性を獲得する傾向があると言われています。

そこで、KRAS 12C阻害剤と免疫療法との併用療法が検討されています。標的療法と免疫療法のしくみはまったく異なるため、腫瘍細胞が2つの治療メカニズムから同時に逃れるのは非常に困難であるため、KRAS標的薬に対する耐性を回避する上で有望でないかと考えられています。

 

出典:
N Engl J Med 2020; 383:1207-1217
DOI: 10.1056/NEJMoa1917239

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