がん免疫療法コラム

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Vol.197 メトホルミンとがん免疫療法の併用効果について

  1. はじめに

癌との治療に関係のないII型糖尿病薬である「メトホルミン」が実は免疫細胞保護を通じた抗がん作用があることが最近の研究でわかりました。固形がん中の休眠状態にある細胞傷害性T細胞の活性化を促す方法について重要な知見をもたらすものであり、現行の免疫治療薬である免疫チェックポイント阻害薬との併用によってがん免疫療法をより効果的に改善できることが期待されています。今回はこの「メトホルミン」について解説していきたいと思います。

 

  1. メトホルミンとは

Ⅱ型糖尿病薬であるメトホルミンは1959年以降、日本を含む世界100ヵ国以上で承認されている薬剤であり、Ⅱ型糖尿病治療薬のうちビグアナイド薬に分類され臨床でも頻繁に使用されています。臨床現場において長年使用されており安全性が確認されていますが、副作用として乳酸アシドーシスの発症が有名です。

 

  1. メトホルミン服用者は発がん率が低い

メトホルミンに発がん抑制作用があることが疫学的研究で示されています。II型糖尿病薬メトホルミン服用患者は結腸がん(リスク比0.68)、肝臓がん(同0.20)、肺がん(同0.67)と発がんリスクが有意に低いと報告されています。これは大腸癌ではメトホルミンはがんによる死亡リスクを32%減少させることを意味しています (Noto H, PLoS One. 2012)

 

  1. 免疫チェックポイント阻害剤との併用効果

本邦の研究グループによって新たに発表された研究内容ではこのメトホルミンが、がん局所に存在する制御性T細胞の増殖と機能を抑制することを明らかにしました。

固形がんの中に浸潤した免疫T細胞は眠った休止状態にありますが、メトホルミンによって免疫細胞のミトコンドリアに微量活性酸素を発生させます。これによって、代謝バランスを変化させることで、自身の活性酸素を消去する力を高め、免疫T細胞の増殖を促すと同時にがん細胞の殺傷力を高めます。最終的に抗がん活性につなげることが可能であると明らかになりました。また、今まで不可能だったがん局所だけの制御性T細胞の抑制をもたらす効果も認めたという。

実際に、動物実験においてもマウスに作ったがん組織内に浸潤したリンパ球を観察してみると、通常なら免疫疲弊状態にあり、半分以上が死んでいるのですが、メトホルミンを加えた飲水摂取マウスでは、がん組織内に浸潤したリンパ球の細胞死が回避され、がんの増殖を抑制していることが確認されました。

 

  1. 今後の展望

メトホルミンと免疫療法の併用は現時点(2022年12月)では臨床応用されていませんが、今後のがん免疫治療に革新をもたらし、より効果的で安全な治療法の開発につながる可能性があると考えられています。

 

出典:
EBioMedicine. 2017 Nov;25:154-164.
J Immunother Cancer. 2021 Sep;9(9):e002954.

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