がん免疫療法コラム

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腫瘍微小環境とは?

はじめに

がん細胞は体内で免疫システムから逃れられるようながん細胞自身にとって心地よい環境で生き残っています。このように悪性腫瘍では腫瘍に対する免疫抑制性の環境が形成されており、これを腫瘍微小環境(TME:Tumor microenvironment)と呼びます。実際には、腫瘍組織やその周囲に混在する正常組織や免疫細胞,血管系細胞,線維芽細胞などの様々な細胞・非細胞成分から構成される、複雑な微小環境のことを指します。

 

これまでの抗がん剤の作用

今までのがん治療では、がん細胞自体の増殖を抑制するという観点から抗がん剤や分子標的薬が開発されてきました。つまり、がん細胞が分裂して増殖する過程を妨げる(がん細胞を直接攻撃する)ことに着眼されてきましたが、その考え方を根本的に変えてしまったのが次に説明する「がん免疫療法」になります。

 

がん免疫療法の登場

免疫チェックポイント阻害剤(がん免疫療法)はその腫瘍微小環境を標的にしている治療となり、従来の抗がん剤とは異なる仕組みで作用します。

免疫療法の効果が出やすいとされる悪性黒色腫の例をとって見てみると、根治切除が難しい悪性黒色腫に対する複数の抗がん剤や放射線療法を組み合わせによる治療の奏効率は5~10%でした。その一方で、免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ(オプジーボ)の奏効率は25%とがん免疫療法の効果の高さが証明されました。

このようにがん免疫治療の成功により、免疫を介して間接的にがん細胞を制御することが可能であることを明らかになりました。がん免疫療法は2014年に本邦でも承認され、2018年にはノーベル賞を受賞しました。近年の研究では腫瘍微小環境が新たな標的としてさかんに研究がされています。

 

がん免疫療法の課題

一方で、これまでの臨床経験からも様々な課題も出てきています。がん免疫療法が非常に長期に効果が持続する場合もあれば、まったく無効で副作用だけが出てしまうような場合、逆にがんが急激に悪くなってしまうような場合も報告されています。未だにそのメカニズムは解明されていません。がん免疫は遺伝子が非常に均一なマウスを用いた動物実験で研究がなされてきましたが、人間は遺伝子が極めて不均一であるためではないかと考えられるようになってきました。

最後に

がんでは全身の免疫状態、腫瘍のゲノム、腫瘍微小環境、そして環境因子など、非常に多様な因子が複雑に関与しており、個々の患者においてこれらの因子が異なっていると考えられています。この考えに基づいて、一人ひとりの患者において免疫抑制因子を同定し、それを治療に活かせるような個別化治療を目指した研究が現在進んでいます。

 

出典:
Nat Rev Clin Oncol. 2019 Jun;16(6):356-371. doi: 10.1038/s41571-019-0175-7.
Nat Immunol. 2020 Nov;21(11):1346-1358. doi: 10.1038/s41590-020-0769-3.

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