がん免疫療法コラム

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大腸癌と口腔内細菌叢1

  1. 口腔内細菌叢について

人体を構成する40兆個の細胞のうち、約6000億個がコピーされますが、その中で約5000個はコピーミスを起こします。通常は免疫細胞が働きコピーミスを起こした細胞は排除されますが、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の変化によってがん細胞は増殖し、進行すると転移を起こします。遺伝子の変化が起こる原因には、化学的刺激(喫煙や飲酒)、物理的刺激(光線や傷)、生物学的刺激(細菌やウイルス)があります。中でも近年では生物学的刺激である口腔内細菌叢が着目を浴びています。腸内細菌叢は口腔細菌叢により変化することが分かっています。また、肝臓がんや大腸がんの原因菌の中には、歯周病菌など口腔内細菌が関わっていることが明らかになっています。

 

  1. 癌と口腔内細菌叢の関係

大腸がんの大腸細菌叢に対する口腔細菌叢の関与についての研究では、大腸がんと診断された患者と健常者それぞれの唾液と便を用い、遺伝子レベルで細菌叢を解析しています。

その結果では大まかな大腸細菌叢の構成や口腔細菌叢の多様性は、健常者と大腸がん患者で明確な差はありませんでした。一歩で、便では有意な差が認められ、大腸がんの原因・誘因となる細菌があることが示唆されました。それは口腔内常在菌のうち次の4種:①Peptostreptococcus stomatis, ②Streptococcus anginosus, ③Solobacterium moorei, ④Streptococcus koreensisでした。そのうち③S. mooreiは大腸がんの進展にも関与していることが示唆されました。この研究により発見された口腔から大腸に細菌が供給されていること、4種類の口腔細菌は大腸がんに特異的であることから、大腸がん及び発がんに関わる細菌であることが示唆されることが分かりました。

 

  1. 良好な口腔内細菌叢を保つには

健全な口腔内フローラであれば良い菌が大腸に運ばれ健全な腸内フローラをつくります。しかし口の中にこれら4種の口腔細菌がいると、大腸まで運ばれて大腸がんが発生しやすい腸内フローラに変化し、大腸がんの発癌や進行に及んでしまうことがあります。また、口腔内細菌叢は口腔や咽頭の癌の原因にもなりうることが明らかになっています。口腔内細菌叢は母親から子供へ伝播し、出生前胎児の時期から形成され、出産を機に食餌等により小児までの間多様に変化します。そのため、良質な細菌叢を形成するには、親の口腔内環境・乳児から小児期の口腔内環境・絶え間ない口腔衛生管理が重要だと考えられています。

  1. 最後に

将来的には唾液を用いた細菌叢解析によって、大腸がん診断やリスク診断の方法の確立が望まれるところです。次回は今回取り上げなかった歯周病に関連する口腔内常在菌と大腸癌についての関連を解説いたします。

 

出典:Cancers 2021, 13(13), 3332, doi:10.3390/cancers13133332

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