がん免疫療法コラム

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Vol.185 革新的ながん治療薬1:機能性ペプチドを利用したドラッグデリバリーシステム

  1. はじめに

固形腫瘍に対する化学療法・免疫療法は現在に至るまで大きな進歩を遂げてきました。しかし、現実には治癒できない患者さんもおり、まだまだ発展の余地があると言っても過言ではありません。

問題点としては①抗癌剤の組織特異性の低さ、②腫瘍組織への薬剤到達性の低さが挙げられます。前者には正常組織の障害(副作用)のリスク、後者には腫瘍血管の不均一性、無秩序な血管走行、細胞外基質の増生などが関与していると考えられています。今回はこれらの問題点を克服する新たな治療戦略として注目を浴びている機能性ペプチドについて紹介していきます。

  1. ペプチドとは?

ペプチドは数個から数十個のアミノ酸の連続体からなる小分子のことを指し、体内でも実際に産生され、きわめて多彩な生理機能を担う生体の恒常性維持に必須の分子になります。一方、生理的に体内で産生されるこれらペプチドとは別に、近年研究の進展により大きく注目されているのが、機能性ペプチドになります。

  1. ドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用

これらペプチドを用いて腫瘍内部に薬剤を運びやすくするというドラッグデリバリーシステム(DDS)の臨床応用が期待されています。これまで開発されたペプチド製剤の中で,医療薬剤のDDSキャリアとして実際に注目を集めているものに環状RGD(iRGD)と呼ばれるものがあります。

  1. iRGDについて

iRGDは塩基性アミノ酸を含む配列を持つ9個のアミノ酸からなる環状ペプチドです。本ペプチドは輸送目的分子(薬剤など)と結合させる必要がなく、このペプチドを抗癌剤や抗体薬と混和した形で投与すると、薬剤の腫瘍組織における浸透性が増して抗腫瘍効果の増強が期待されます。他にも正常細胞に対して毒性が低く、また簡単に低コストで合成できるという特徴があります。

動物実験ではiRGDを担がんマウスに投与すると neuropilin-1(NRP1) という分子に最終的に結合して血管漏出性が亢進し、薬剤のデリバリー効率が向上することが示されています。また、殺細胞性抗癌剤や免疫チェックポイント阻害薬との併用効果も認めています。

さらに、この薬剤はヒトでも応用されつつあります。膵癌に対してPhaseⅠ臨床試験が実施され、有効性と安全性が確認されています。これに続いて今後、PhaseⅡ臨床試験が実施される見込みとなっています。膵癌以外の他癌腫でも有効性の報告が期待されています。

  1. 最後に

今回は固形腫瘍に対する機能性ペプチドを利用したドラッグデリバリーシステムについて紹介しました。紹介したiRGDなどの機能性ペプチドは基礎研究段階にあり、日常診療への応用が待たれるところです。

出典:
Science. 2010 May 21; 328(5981): 1031–1035.
J Control Release. 2015 Mar 10; 201: 14-21.

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