がん免疫療法コラム

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化学療法の副作用を減らすための仕組み「がんDDS製剤」

化学療法は副作用のリスクが高い

日本人の死因の約3割を占めるがんは、誰しもが関わる可能性のある病気です。長年の研究によってさまざまながんの治療法が開発されましたが、最も一般的ながん治療法は化学療法です。化学療法は、抗がん剤を使用してがん細胞にダメージを与えることで治療効果を発揮します。抗がん剤は、全身に散らばった目に見えないがん細胞に対して治療効果を発揮するメリットがありますが、正常な細胞に対しても攻撃することがあるため副作用のリスクが高いというデメリットもあります。化学療法によって起こる副作用は、治療を進める上で大きな障害となるため副作用軽減のための工夫がおこなわれることになりました。

 

DDS(ドラッグデリバリーシステム)で副作用が減らせる

近年の抗がん剤は、さまざまなDDS製剤が開発され、化学療法特有の副作用を軽減する効果が期待されています。DDSは、ドラッグデリバリーシステムの略であり、従来の医薬品では全身に薬が分布していたものを疾患部位にのみ医薬品が集まるようにした技術です。抗がん剤のDDS製剤は、がん細胞にのみ抗がん作用を発揮し、正常な細胞にダメージがいかないようにします。

がん組織で形成される血管は、正常な血管に比べて構造がしっかりしておらず、比較的大きなものも透過する特徴があります。また、医薬品を排出する機能があるリンパ系が腫瘍組織では未発達のため、一度、抗がん剤が腫瘍組織に入ると長く留まることが知られています。そのため、正常血管からは透過しないが、腫瘍組織の血管は透過するサイズのナノ粒子(リポソームなど)や抗体に抗がん剤を結合させることで腫瘍組織にのみ効果を発揮させることができます。

DDS技術の一つとしてリポソーム製剤というものがあります。リポソームは、細胞膜を構成する脂質の一つです。抗がん剤をリポソームで包み込むことで、腫瘍組織の未発達な血管を透過して副作用を軽減し、治療効果を高めることができます。

近年では、抗がん剤を使用した化学療法以外にも前立腺がんや卵巣がんの治療でおこなわれるホルモン療法や抗体療法、放射線免疫療法にもDDS製剤が開発、承認されているので、DDS技術の重要性がさらに注目されることでしょう。

 

がん免疫療法など他の治療法にも応用できる

従来の抗がん剤をDDS技術によって治療効果を高め、副作用を減らすことで今まで体力が少なかったり、副作用が強くあらわれたりして化学療法を断念していた患者さんにも使えることが期待されています。また、がん免疫療法と併用することで生存率が上昇したという報告もされています。抗がん剤のDDS製剤開発が進むことで、がん治療の選択肢が大きく広がるといえるでしょう。

 

まとめ

従来の抗がん剤による化学療法は、副作用のリスクがありました。しかし、DDS技術によってがん細胞に選択的に効果を発揮することで治療効果を高め、副作用のリスクを低下させることができました。DDS技術を応用した医薬品は、化学療法だけでなくホルモン療法や放射線療法の分野でも開発されています。DDS製剤の普及によってがん治療の幅が広がることが考えられます。

 

参考文献

がん治療の発展とDDS(松村保広),医学界新聞

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2019/PA03304_02

副作用のないがん治療をタンパク質製ドラックデリバリーシステムで実現する

http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_96/

がん化学療法ハンドブックー抗がん剤治療を受ける患者さんのためにー

http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/NVB0005.pdf

 

 

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