がん免疫療法コラム
免疫チェックポイント阻害薬特有の副作用:irAEについて1
- はじめに
免疫チェックポイント阻害剤はがん免疫治療として様々な癌腫に対して普及しています。がん免疫療法は一般的に副作用の少ないがん治療とされますが、免疫チェックポイント阻害剤は効果が高い分、副作用も出ることがあります。今回は免疫チェックポイント阻害薬の副作用について2回に分けて解説していきます。
- 免疫チェックポイント阻害薬について
がん細胞は免疫にブレーキをかけて攻撃を逃れていますが、ブレーキをはずして免疫を活性化させる免疫チェックポイント阻害剤(ICI:immune-checkpoint inhibitor)が開発されました。ICIはPD-1やCTLA-4といった免疫を不活化する分子を阻害することで、がん細胞に対する免疫を増強させて治療効果を発揮します。
- 免疫チェックポイント阻害薬の副作用:irAEについて
しかし、ICIはがんに対する免疫だけを選択的に増強することはできず、免疫全般を過剰に活性化してしまい、免疫が自分自身を攻撃してしまうことがあります。この機序によって自己免疫疾患に似た症状を引き起こすことがあり、免疫関連有害事象(irAE:immune-related adverse event)と呼ばれます。これは今までの抗癌剤(細胞障害性抗癌薬)とは異なる特有の副作用と言われています。
PD-1阻害薬の有害事象はおおよそ投与数ヶ月後に生じることが多いと言われていますが、出現時期には大きなばらつきがあります。また、CTLA-4阻害薬は皮膚粘膜障害が比較的早期に出現し、その後消化器症状が現れやすいと考えられています。
- irAEの治療について
irAEの頻度は比較的少なく、通常軽度であれば、慎重な管理のもと免疫チェックポイント阻害剤の治療を継続できるとされています。しかしながら、中等度から高度のirAEについては臓器機能およびQOLの著しい低下と関連し、致命的な結果が報告されています。そのため、irAEを早期発見し適切な治療を行うことが重要になります。
また、従来の殺細胞性抗がん剤の副作用は、一般的に投薬を中止すれば改善しますが、irAEは投薬を中止しても持続することが多いとされています。治療ではステロイドと呼ばれる免疫抑制薬で対処することがあります。
- 最後に
免疫チェックポイント阻害薬の副作用である免疫関連有害事象(irAE)について概要を解説しました。次回はどのような臓器で、どのような症状がでるのかについて解説していきます。
出典:
irAEアトラス(https://www.iraeatlas.jp/)
Brahmer JR et al; J Clin Oncol. 36(17):1714-1768. 2018.