がん免疫療法コラム

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Vol.167 iPS細胞の研究ががん治療を加速させる

iPS細胞とは

人の細胞は、60兆個存在するといわれています。たくさんの細胞が集まることでさまざまな臓器や組織が作られます。基本的に成熟した細胞は、他の細胞へと分化することができません。しかし、人体に存在するほぼ全ての細胞に分化できるものとして多能性幹細胞が存在します。多能性幹細胞は、ほぼ全ての細胞に分化できるため損傷した臓器や組織を新しく作ることも可能であり、再生医療への利用が期待されています。多能性幹細胞にはES細胞やiPS細胞が存在します。

 

ES細胞は、受精卵を使用するため患者さんの細胞とは異なるため拒絶反応を起こす可能性があり、倫理的にも問題がありました。しかし、iPS細胞は、体細胞から作られるため患者さんから臓器や組織を作ることが可能です。そのため、ES細胞に比べてiPS細胞は安全性が高いと考えられ、倫理的な問題もクリアできるのもメリットです。

がん細胞からiPS細胞が作れなかった

健康な体細胞からiPS細胞を作成することができますが、がん細胞からiPS細胞の作成が困難であることが知られています。がん細胞からiPS細胞が作られない理由は長い間、不明でした。しかし、がん細胞の増殖には、特定の遺伝子の活性化が関係していることが考えられ、特定遺伝子の活性を抑制することでiPS細胞の作成できる可能性があります。

 

がん細胞からiPS細胞が作られないメカニズムの研究によってがん増殖に必要な経路が判明

特定の遺伝子が働くことで、細胞内で特殊なシグナル経路が活性化され、がん細胞が増殖、生存することが可能となります。これらの経路をピンポイントで阻害することで治療する分子標的薬は、治療効果も高いことから近年では、開発研究が進んでいます。

 

しかし、非常に珍しく、治療が難しいとされるがんである「明細胞肉腫」では、増殖に必要な遺伝子が働くことで、どのような経路が活性化されているのかは不明でした。経路を特定するためには、がん細胞からiPS細胞が作れないという特性が有効と考えることができます。がん細胞に、細胞内の経路を阻害する薬剤を使ってiPS細胞を作るスクリーニング(多くの化合物から治療に有効な化合物を見つける)をおこなったところ、mTOR経路阻害剤を使用したがん細胞からiPS細胞を作れました。このことから、明細胞肉腫の増殖に関わる経路はmTOR経路ということが判明しました。

がん細胞の増殖に必要な経路に対応した治療薬が選べる

がん細胞からiPS細胞生成を阻害しているメカニズムを応用した検査方法が、がん細胞の増殖に必要な経路を特定する方法として有効であることが示されました。特定の経路に作用する治療薬を選ぶことで、化学療法に比べて少ない副作用で高い抗がん作用が期待できます。

まとめ

明細胞肉腫(CCS)のマウスの細胞を使った研究では、iPS細胞への変化を阻害する経路が判明し、がん細胞増殖にはmTOR経路が活性化する必要があることもわかりました。これらのメカニズムを応用した検査方法は、分子標的薬や抗体医薬品の開発にも貢献できると考えられます。

 

 

参考文献

国立研究開発法人日本医療研究開発機構,がん細胞からiPS細胞が樹立できない分子メカニズムを解明―新しいがん分子標的薬の開発に道―

https://www.amed.go.jp/news/release_20220427.html

京都大学iPS細胞研究所,iPS細胞とは

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq_ips.html

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