がん免疫療法コラム
子宮頸がんワクチンについて2
前回に引き続き、子宮頸がんワクチンについての2回目の解説を行っていきます。
- ワクチンの効果
子宮頸がんなどの予防としてのヒトパピローマウイルス感染症(HPV)ワクチンは、平成25年4月から国の予防接種法に基づく定期の予防接種として実施されています。通常、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に3回の定期接種が行われています。ワクチンの接種によって、16型と18型による子宮がんの前がん病変の発生を95%以上防ぐことができます。4価ワクチンであれば、6型と11型の感染(尖圭コンジローマの発症)も同様に防ぐことができます。
- ワクチンの副反応
摂取した部位の痛みや腫れ、微熱が出ることもありますが、重大な副反応は稀です。しかし、本邦ではワクチン接種が法整備された直後から、疼痛・運動障害・不随意運動などといった多様な症状がマスコミ等で多く報道されました。そのような経緯もあり、2ヶ月後の平成25年6月に厚生労働省から以下の積極的勧奨の差し控えの勧告がなされました。
「ワクチンとの因果関係が否定できない持続的な疼痛が、ワクチン接種後に特異的に見られたことから、副反応の発生頻度等がより明らかになるまでの間、HPVワクチンの定期接種を積極的に勧奨しない」
国としてはこの状況を打開すべく、対策に乗り出しました。平成27年8月にはHPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引きが発刊されました。また、平成29年11月には厚生労働省専門部会ではワクチン接種後に報告された多様な症状とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されました。
- 子宮頸がんワクチンの現状
本邦では上記のような経緯もあり、副反応の懸念のため接種数が低い状態が続いてきました。しかし、ここ2~3年の間に接種数が大幅に増加してきています。厚生労働省として令和4年度からの積極的な勧奨の再開を決定しています。また、世界では世界保健機関(WHO)をはじめ、世界中で子宮頸がんワクチンは安全なワクチンと認められており、公的接種として位置づけられています。さらに2020年にはスウェーデンからは世界で初めて国家規模レベルでHPV ワクチンの浸潤子宮頸がんの減少効果を示す論文が発表されました。ワクチンと検診が高い頻度で実施されれば、子宮頸がんは今世紀中に排除可能(症例数が人口 10 万あたり 4 人以下になること)であると推計されています。
- まとめ
このように日本は紆余曲折を経ましたが、現在ではHPVワクチン接種が推奨されています。HPVワクチンについて科学的根拠に基づく正しい知識を共有した上で、接種をするかしないかを1人1人自らが選択することが重要です。
出典1:厚生労働省 令和4年4月からのHPVワクチンの接種について
出典2:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」ヒトパピローマウイルスワクチンNo.21