がん免疫療法コラム

シンボルマーク
パターン
パターン

Vol.165 ウイルスが原因で起こる成人T細胞白血病

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV‐1)が原因

成人T細胞白血病は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に感染することで発症する疾患です。成人T細胞白血病を発症すると初期段階として発熱や全身倦怠感、食欲不振、全身のリンパ節の腫れ、皮膚の発疹や腫れなどがあらわれます。免疫において重要な役割を果たすT細胞ががん化するため免疫不全を起こすので、さまざまな感染症にかかる可能性が高くなります。

HTLV-1感染者は地域によって偏りが存在し、九州や沖縄など西南日本を中心に感染者が多いのが特徴です。HTLV-1は主に乳児期の母乳摂取や性交によって感染することが知られています。全国で、HTLV-1感染者は100万人存在すると言われていますが、その多くは感染に気づいていないと考えられています。

HTLV-1が免疫細胞の一つであるT細胞に感染することでがん細胞化し、増殖することで成人T細胞白血病を発症しますが、発症する年齢は高齢者に偏っており、40歳以下での発症は極めて稀です。また、HTLV-1感染者が生涯において成人T細胞白血病を発症する確率は3〜5%とされ、多くの感染者は無症状のまま生涯を閉じます。

 

成人T細胞白血病は治療が難しい

成人T細胞は、血中の異常リンパ球の割合や臓器への浸潤、高LDH血症や高カルシウム血症の有無などによって「くすぶり型」「慢性型」「リンパ腫型」「急性型」に分類されています。くすぶり型やLDH、BUN、アルブミン値の数値に異常がない慢性型は、治療をせずに経過観察されますが、急性型に進展すると非常に治療が難しいのが現状です。くすぶり型やLDH、BUN、アルブミン値の数値に異常がない慢性型と診断されてから生存期間の中央値は4.1年と報告されています。

急性型やリンパ腫型、LDH、BUN、アルブミン値の数値に異常がある慢性型は、抗がん剤を使用した化学療法では、生存期間中央値は13ヶ月、3年生存率は24%とされています。

近年では、成人T細胞白血病の治療として健康な人の造血幹細胞を移植する「同種造血幹細胞移植」がおこなわれるようになりました。3年生存率が40%と化学療法よりも高い効果が期待できますが、ドナーの確保が困難であるという問題があります。

 

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV‐1)の感染者数は減少傾向

成人T細胞白血病の原因であるHTLV-1は、日常生活において感染することはありません。感染経路として母乳による感染が最も関与しているとされているため、赤ちゃんを母乳ではなく粉ミルクで育てることで予防できます。そのため、妊婦健診でHTLV-1抗体検査を受けることで、赤ちゃんへのHTLV-1感染を事前に防ぐことが可能です。

長崎県の妊婦を対象とした調査では、HTLV-1感染者は1950年に6.05%でしたが、2010年は0.06%と報告されています。成人T細胞白血病の予防がしっかりおこなわれるようになってからはHTLV-1感染者は減少傾向であり、21世紀後半には長崎県から成人T細胞白血病が駆逐されると予想されるほどです。

 

まとめ

成人T細胞白血病は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)によって引き起こされる疾患であり、非常に治療が難しい疾患です。従来の抗がん剤治療では十分な治療が難しく、造血幹細胞移植はドナー確保が難しいのが問題でした。しかし、予防法が確立されているためHTLV-1感染者は減少傾向であるため、成人T細胞白血病を発症する患者は減少すると考えられます。また、近年では、抗体医薬品によって完全寛解率が上昇したという報告があり、今後の治療薬の進展が期待されています。

 

参考文献

国立感染症研究所,成人T細胞白血病とは

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/326-atl.html

日本内科学会,成人T細胞白血病の診断と治療

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/7/106_1397/_pdf/-char/ja

Adult T-cell leukemia/lymphoma

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24476526/

HTLV-1関連脊髄症(HAM)診療ガイドライン2019

https://neurology-jp.org/guidelinem/ham/ham_2019.pdf

厚生労働省,ATLとHTLV-I のQ&A

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/qa.html

この情報をシェアする
シンボルマーク

よく読まれている記事

株式会社 同仁がん免疫研究所
〒862-0967 熊本県熊本市南区流通団地1-44-2  TEL : 0120-350-552
© Dojin Institute of Cancer Immunology, Co., Ltd. All Right Reserved.