がん免疫療法コラム

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Vol.162 超音波と免疫療法で癌を撃退!?

  1. はじめに

超音波はヒトの聴覚の可聴域を超える高周波数で振動する20 kHz以上の音波と定義されます。臨床の場において汎用される超音波診断装置は、対象組織に応じて数MHz~十数MHz までの超音波が主に使用され、その低侵襲性・利便性から日常臨床では必要不可欠なものとなっています。

 

  1. Oncotripsyについて

近年、がん細胞をその物理的特性に基づいて選択的に死滅させることを研究するoncotripsyと呼ばれる分野が台頭してきています。これはがん細胞が特定の周波数の超音波に脆弱性を有する性質を利用して、共鳴周波数での超音波調和励起によって選択的にがん細胞を標的とする開発中の癌治療法になります。超音波治療に分類され、いずれは化学療法、免疫療法、放射線療法、外科手術と並んで用いられる癌治療となることが期待されています。

集束超音波により腫瘍を破壊する治療法はすでに用いられていますが、ほとんどの場合は高強度の超音波ビームによって細胞を加熱して破壊するか、超音波を照射する前に造影剤を注入するかを方法として用いられています。そのため、熱により正常な細胞まで影響を受けることがあります。また、造影剤はごく一部の腫瘍に対してしか有効を示さないとされています。基礎研究の段階ではありますが、健康な細胞に悪影響を与えることなく癌細胞を死滅させることができる低強度超音波の技術が開発されたとする報告がありました(文献1)。今回の研究をきっかけとしてoncotripsyに関する研究が進むことが期待されています。

 

  1. 免疫療法との併用療法について

体外からの外部刺激に応答したドラッグデリバリーについても着目されており、免疫療法との併用療法についても展望があります。癌免疫療法は単剤でも有効ですが、他の治療との併用療法について近年は研究が盛んに進んでいます。免疫チェックポイント阻害薬においてはその治療効果は腫瘍内のCD8 + T細胞の分布に大きく依存しています。最近の報告ではマウスの大腸癌モデルにおいて、超音波刺激が腫瘍灌流を促進し、抗PD-L1抗体の送達を増加させるというメカニズムが示されました(文献2)。さらに、超音波刺激と抗PD-L1抗体の併用療法は腫瘍血管の正常化、腫瘍浸潤CD8 + T細胞の増加、Ki67の発現、IFNγおよびグランザイムBの分泌促進を示し、より強力な腫瘍増殖抑制効果を示しました。単剤療法よりも効果が高く、これらの結果は超音波療法と免疫チェックポイント阻害の組み合わせが有望な治療法であることを示唆しています。

 

  1. まとめ

このように超音波を用いて癌治療を行うoncotripsyの実用化に向けて研究が進んでいます。さらに免疫療法との相乗効果も期待され、その臨床応用が待たれるところです。

 

出典:

文献1:Appl. Phys. Lett. 116, 013701 (2020); https://doi.org/10.1063/1.5128627

文献2:Cancer Letters 498 (2021) 121–129; https://doi.org/10.1016/j.canlet.2020.10.046

 

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