がん免疫療法コラム

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がん免疫療法の歴史2

今回は前回に引き続き、がん免疫療法の歴史について述べていきます。免疫療法が脚光を浴びることになる免疫チェックポイント分子の発見から現在に至るまでの飛躍的進歩と免疫療法のこれからについて解説します。これまでの段階では、がん免疫療法は一般的に懐疑的な目でみられていました。

 

CTLA-4の発見

1987年にフランスの研究チームがCTLA-4(cytotoxic T lymphocyte Antigen-4:細胞傷害性Tリンパ球抗原-4)を発見し、1996年にカリフォルニア大学バークレー校のJames Patrick Allisonはこの分子がT細胞によるがん細胞への攻撃にブレーキをかける働きをもっていることを突き止めました。この免疫応答を抑制するブレーキを免疫チェックポイント分子と呼びますが、この経路を阻害することによって抗腫瘍免疫応答を引き起こす免疫チェックポイント療法の基礎が築かれました。そして、この研究は世界初の免疫チェックポイント阻害薬である抗CTLA-4抗体イピリムマブ(ヤーボイ®)の臨床開発に繋がりました。最終的に、2011 年には転移性メラノーマの治療のために米国食品医薬品局(FDA)に承認されることになります。

 

PD-1の発見

一方、それと独立して1992年に京都大学の本庶佑らの研究チームによりT細胞の細胞死誘導時に発現が強くなる遺伝子としてPD‒1(programmed cell death 1)が単離・同定されました。さらには1999年に自己免疫疾患を起こすことが証明され、2000年に免疫チェックポイント分子であることが示されました。T 細胞活性化を抑制するシグナルを遮断することで効果を発揮する免疫チェックポイント阻害剤として、抗PD‒1 抗体であるニボルマブ(オプジーボ®)は2014年に世界に先駆けて日本で承認されました。2013年にScience誌によりBreakthrough of the yearにがん免疫療法が選出され、さらには2018年にはノーベル生理学・医学賞をJP. Allisonと本庶佑先生が共同受賞するに至りました。

 

これからの免疫療法

その間に免疫チェックポイント阻害剤は複数のがん腫に対する治療薬として承認を獲得し、手術、化学療法、放射線療法に続く新規がん標準治療として臨床現場で実践される時代が到来しました。免疫チェックポイント阻害剤に続く新たな治療法として、遺伝子改変型T細胞(CAR-T)療法が開発され、2019年に白血病や悪性リンパ腫に保険承認されました。さらに、これらのがん免疫療法同士の組み合わせや既存の標準療法との組み合わせによる複合的がん免疫療法の研究や開発が世界中で取り組まれています。また、これらの治療効果が効く患者と効かない患者を選別するための薬効マーカーに加え、効果を判定するためのバイオマーカー探索も本格化しています。標準治療が大きく変容している今、まさに、がん治療のパラダイムシフトを迎えていると言えるでしょう。

 

[参考資料]

Tomokazu Aoki, Jpn J Neurosurg 27:712‒722, 2018

別冊「医学のあゆみ」 がん免疫療法の躍進 – 医歯薬出版, 2018年9月発行

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