がん免疫療法コラム

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Vol.158 がん免疫療法の歴史1

免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)ことなどにより、免疫本来の力を利用してがんを攻撃する治療法を「免疫療法」といいます。この免疫療法は現在に至るまで約130年にわたって進化を続け、現在では3大医療に次ぐ「第4の治療法」と呼ばれるまでに発展しました。今回は2回に分けてその歴史を見ていきたいと思います。

 

がん免疫療法の始まり

がん免疫療法の始まりは1891年に米国の外科医William B.Coley氏が細菌を用いて悪性腫瘍を縮小させたこととされています。このコーリートキシンは一定の治療効果を示したとされていますが、その後の放射線療法や外科療法、化学療法の著しい開発と普及の中で癌治療の主流となることはありませんでした。

一方で、日本における免疫療法の始まりは1944年に登場した丸山ワクチンになります。もともとは皮膚結核のワクチンとして開発されましたが、丸山ワクチンの接種対象であった結核やハンセン病の患者さんには癌が少ないということに丸山博士が発見し、癌治療にも使われるようになりました。同様の考え方のもと結核菌由来のBCG療法が登場してきました。こうした免疫力全体に働きかける治療法は非特異的治療と呼ばれています。

 

がん免疫療法の発展

腫瘍免疫学の研究はその後も多くの研究者によって引き継がれました。1950年代にはFrank Burnetらが、生体内におけるがん細胞の発生を免疫システムが監視しており、腫瘍に対する免疫応答がその発生を抑制しているという概念(免疫監視機構)を提唱し、2001年にRobert Schreiberらによってその存在が実証されました。一方、1991年にはThiery Boonらが細胞傷害性T細胞の認識するがん細胞由来のペプチドを同定し、免疫システムによる腫瘍反応性を分子レベルにおいて証明したことから、腫瘍抗原という概念が確立しました。

このような腫瘍免疫学の進展に伴い、多くのがん免疫療法の開発が進められました。上記のもの以外にもサイトカインなどの免疫賦活化誘導剤(サイトカイン療法)、がん患者のリンパ球を体外で活性化してから投与する養子細胞免疫療法(ACT:adoptive cell transfer)などが開発されました。また、さらに腫瘍抗原ペプチドを利用したがんワクチン療法や樹状細胞ワクチンなども臨床応用されました。これらの治療法は一部の症例において治療効果を示したものの、実際には化学療法(殺細胞性抗癌剤や分子標的薬)を上回る臨床効果を示すものは限られていました。

 

今回はがん免疫療法の黎明期・発展期について解説しました。次回は免疫療法が脚光を浴びることになる免疫チェックポイント分子の発見から現在に至るまでの飛躍的進歩と免疫療法のこれからについて解説します。

 

[参考資料]

Tomokazu Aoki, Jpn J Neurosurg 27:712‒722, 2018

別冊「医学のあゆみ」 がん免疫療法の躍進 – 医歯薬出版, 2018年9月発行

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