がん免疫療法コラム

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がん免疫_iPS-NKT#1

「免疫」という外敵を攻撃するシステムを担う主な細胞はリンパ球です。リンパ球にはT細胞、B細胞それからNK細胞があり、それら3つがほとんどを占めますが、1986年に第4のリンパ球としてNKT(ナチュラルキラーT)細胞が発見されました。

 

NKT細胞とは

このNKT細胞は、自然免疫と獲得免疫にかかわるともに、免疫細胞を賦活化させる作用があるため、がん細胞を攻撃し死に至らしめる能力が極めて高いと考えられています。しかし、NKT細胞はヒト血液中に0.01~0.1%程度しか存在しない非常に数の少ない細胞であり、がん患者さんではさらに少ないことが示唆されています。実際、末梢血NKT細胞数の低下は、予後不良因子であることも指摘されています。

このように貴重な働きをするNKT細胞を用いた臨床試験が行われています。頭頚部がん患者さんに対する第II相試験では、αGal-Cerをパルスした抗原提示細胞を鼻粘膜に投与した後、体外で増幅させた患者さん自身のNKT細胞をがんに流れ込む静脈に投与したところ、10例中、部分寛解を5例で認めました。そして効果があった患者さんでは腫瘍内にNKT細胞が増えていることが確認できました。

 

NKT細胞を増やす試み

このように実際にがんに対して効果のあるNKT細胞ではありますが、がん治療としてさらにNKT細胞を用いるには、数を増やす必要があり、これが大きな障壁となっていました。しかし、2006年に京都大学の山中伸弥教授によって作製されたiPS細胞によって、この問題は一気に解消に向かいました。

具体的には、血液中のNKT細胞に山中の因子を導入してiPS細胞に初期化します。iPS細胞はいくらでも増やすことができますから、そこから再びNKT細胞に分化することによって、大量のNKT細胞を作製するという方法です。こうしてできたiPS-NKT細胞は、通常のNKT細胞と同じように、さまざまなヒト由来のがん細胞株に対して、細胞傷害活性を示すことが明らかとなりました。

この方法で大量生産できるようになったiPS-NKT細胞を用いて臨床試験をする試みも始まっています。次回はそのお話を紹介したいと思います。

 

[参考資料]

Godfrey DI et al., NKT cells: what’s in a name? Nat Rev Immunol. 2004 Mar;4(3):231-7.

Yamada D et al., Efficient Regeneration of Human Vα24 + Invariant Natural Killer T Cells and Their Anti-Tumor Activity In Vivo. Stem Cells. 2016 Dec;34(12):2852-2860.

Yamasaki K et al., Induction of NKT cell-specific immune responses in cancer tissues after NKT cell-targeted adoptive immunotherapy. Clin Immunol. 2011 Mar;138(3):255-65

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