がん免疫療法コラム

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Vol.147 がん免疫_がんワクチン療法#2

ぺプチドワクチン

がんワクチンの開発では、そのターゲットとなる抗原(目印)の選択が非常に重要です。1991年に悪性黒色腫に発現する抗原MAGEが発見されて以降、がんにおいて特異的あるいは過剰に発現する抗原が多く見つかってきました。ぺプチドワクチン療法は、このようながん抗原を由来とするぺプチドを見つけて、患者さんに投与することで、抗原を発現するがん細胞だけを攻撃する細胞傷害性T細胞を誘導する仕組みです。

日本でも大腸癌や膵臓癌に対してぺプチドワクチンの治験が行われています。ここでは、特に予後が悪いがんとして知られる膵臓癌における取り組みをご紹介します。

腫瘍新生血管に特異的に発現しているVascular Endothelial Growth Factor Receptor 2(VEGFR2)に対するぺプチドであるElpamotideが見つかり、これを用いた臨床試験が行われました。手術で切除不可能な膵臓癌患者さんを対象として行われた多施設共同第II/III相臨床試験では、Elpamotide投与による生存期間の延長効果は認められませんでした。しかし、強い注射部位反応を認めた例に限れば生存期間の延長が示されました。この結果から、一部の患者さんでは確かにぺプチドワクチンの効果が得られることがわかりました。

そこで次に、術後の膵臓癌患者さんに対する再発予防のための第II相臨床試験が行われました。先ほどのVEGFR2以外に、VEGFR1そしてKIF20Aといったぺプチドを組み合わせたカクテルワクチンを、抗がん剤であるゲムシタビンと併用しました。すると、良好な無病生存率が得られ、また特にがん抗原の発現が高い患者さんでは、有意に再発を抑制することが示されました。

現在は、個々の患者さんにおいてがん抗原を同定し(ネオ抗原といいます)、その合成ぺプチドを用いた臨床研究が悪性黒色腫や神経膠芽腫において開始されています。ネオ抗原は通常のがん抗原よりもさらにがん細胞に特異的に発現し、さらに個々の患者さんごとに作成することになるので、より特異的に、より効果が高いことが期待されるのです。次世代シーケンサーの登場により、個々のゲノム解析技術が飛躍的に進歩しており、がんワクチン療法におけるオーダーメード医療のさらなる進展が期待されます。

 

[参考資料]

Miyazawa M et al., Phase I clinical trial using peptide vaccine for human vascular endothelial growth factor receptor 2 in combination with gemcitabine for patients with advanced pancreatic cancer. Cancer Sci. 2010 Feb;101(2):433-9.

Miyazawa M et al., Phase II clinical trial using novel peptide cocktail vaccine as a postoperative adjuvant treatment for surgically resected pancreatic cancer patients. Int J Cancer. 2017 Feb 15;140(4):973-982.

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