がん免疫療法コラム

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がん免疫_腫瘍溶解性ウイルス療法#3

今回は、腫瘍溶解性ウイルス療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法について概説します。

 

腫瘍溶解性ウイルス療法のタリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherparepvec: T-VEC)はTリンパ球をがん細胞の周囲に誘導することができるので、免疫チェックポイント阻害薬など他の免疫療法の感受性も高めることができます。したがって併用療法によって相乗効果が期待されているのです。

 

併用療法は単剤を上回る

進行期悪性黒色腫の患者さんに対してT-VECと免疫チェックポイント阻害薬であるイピリムマブ(CTLA-4阻害抗体薬)との併用投与を行った第Ib相臨床試験では、中等度以上の有害事象は26.3%に認められましたが、18か月の生存率は67%と比較的良好でした。この結果から、2剤を組み合わせることによって、各単剤投与よりも効果が上回ることが示唆され、また毒性に関しても許容範囲内であると考えられました。

 

続いて、手術ができないほど進行した悪性黒色腫の患者さんに対してT-VECとイピリムマブの併用と、イピリムマブ単剤投与を比較した試験が、198名の患者さんが参加して行われました。併用群では39%の患者さんで、単剤群では18%の患者さんで効果がありました。そして、中等度以上の有害事象は併用群で45%、単剤で35%でした。以上の結果から、併用することでより高い奏効を示すこと、安全性にも大きな問題がないことが再確認されました。

 

ウイルス療法の今後の問題点としては、がん細胞を選択的に溶解できるウイルスの開発、長期的な抗がん効果技術の開発、がん幹細胞への攻撃能の獲得、などが挙げられます。したがって、近年は、先に述べたように単剤での治療効果の限界を克服するために、他の治療薬との併用療法の開発が期待されています。今後の基礎研究および臨床試験の進捗によって、まだまだこの治療は進歩していくことでしょう。

 

[参考資料]

Puzanov I et al., Talimogene Laherparepvec in Combination With Ipilimumab in Previously Untreated, Unresectable Stage IIIB-IV Melanoma. J Clin Oncol. 2016 Aug 1;34(22):2619-26.

Chesney J et al., Randomized, Open-Label Phase II Study Evaluating the Efficacy and Safety of Talimogene Laherparepvec in Combination With Ipilimumab Versus Ipilimumab Alone in Patients With Advanced, Unresectable Melanoma. J Clin Oncol. 2018 Jun 10;36(17):1658-1667.

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