がん免疫療法コラム

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Vol.143 がん免疫_腫瘍溶解性ウイルス療法#1

 100年以上前から、医師たちはがん患者さんがウイルス感染症にかかるとがんが寛解に至る場合があることを知っていました。最初の報告は、慢性骨髄性白血病患者におけるもので1904年のことでした。それ以降も単発的な報告はありましたが、医療として用いられることはありませんでした。1950年代と1960年代には、それらの症例報告から着想を得た医師たちが、実際に天然のウイルスをがん患者さんに投与して治療を試みましたが、がんが小さくなった場合もありましたが、がん患者さん本人が亡くなってしまった場合もありました。

しかし近年、分子生物学の進歩によって、ウイルスの毒性や抗腫瘍効果を増強させた遺伝子改変ウイルスが開発できるようになり、より安全で確実な効果を得られるようになったことで、いよいよ臨床応用への取り組みが始まっており、これを「腫瘍溶解性ウイルス療法」と呼び、がん免疫療法の1つとして扱われています。

 

ウイルスががん細胞を破壊していく

この治療は、まずウイルスを腫瘍内に注射します。すると、遺伝子改変されたウイルスは、がん細胞に感染します。がん細胞の中に入り込んだウイルスは増殖し、がん細胞自体を溶かして破壊します。破壊された細胞から出てきたウイルスはさらに周囲のがん細胞に感染をして、がん細胞を次々と壊します。

一方、破壊されたがん細胞からはウイルスだけではなく、がん細胞特異的抗原(目印)も飛び出してきます。このがん抗原を免疫を担当する細胞が取り込んで、T細胞を活性化させます。活性化したT細胞はがん細胞に向かって攻撃を行い、がん細胞を破壊します。そしてまたその壊れたがん細胞からがん細胞特異的抗原が放出されて・・・という繰り返しになるわけです。

ウイルスは本来ヒトに病気を起こすものなので、この治療を安全に行うには、ウイルスを遺伝子改変する必要があります。主には、ウイルス自体の毒性の減弱、がん細胞を認識する力の増強、免疫を担当する細胞の活性化を増強させる作用などが遺伝子改変技術によって追加されています。実際の臨床試験では、アデノウィルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスなどが用いられています。

次回は、この腫瘍溶解性ウイルス療法の臨床試験の進行状況について述べたいと思います。

 

[参考資料]

Russell L et al., Oncolytic Viruses: Priming Time for Cancer Immunotherapy. BioDrugs. 2019 Oct;33(5):485-501.

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