がん免疫療法コラム

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Vol.140 がん免疫_光免疫療法#1

 がんに対する治療は、近年大きく変化しています。従来の3本柱である手術・放射線療法・化学療法(抗がん剤治療)に加え、4本目の柱として免疫療法が登場し、その重要性は年々増しています。

がん治療において理想的な治療法は、がんのみを攻撃し、正常細胞にダメージを与えないことです。しかし従来の3本柱は、いずれも正常組織にダメージを与え、それによって患者さんが副作用や後遺症に悩まされることも珍しくありません。免疫療法は、その点、従来の治療法よりも正常組織への影響は少ないものの、それでも正常細胞への作用に起因するさまざまな有害事象が発生することが知られています。

そのような背景の中、最近光免疫療法(photoimmunotherapy;PIT)という新しい概念の治療法が実臨床に用いられ始めています。今回はその光免疫療法について概説します。

 

レーザーでがん細胞を狙い撃ち

この治療法は、米国国立衛生研究所の小林久隆氏の長年の研究によって開発され,2011年に発表されました。

まず、がん細胞に発現している特定の目印(抗原)と結合するタンパク質(抗体)に、光に反応する物質をつけたものを、注射で体内に投与します。この抗体は1日程度で体内においてがん細胞に結合します。そこにレーザー光を当てると、薬がついたがん細胞は破壊されます。一方で、抗体が結合しない正常細胞にはレーザー光があたってもダメージは与えず、使用するレーザー光も人体には害がないので、がん細胞以外に影響は及ぼさない仕組みです。

それに加えて、光免疫療法は直接的のみならず間接的にもがんを攻撃します。上記のメカニズムで、光免疫療法によってがん細胞が破壊されると、がん細胞からがんに特有の物質(抗原)が出され、周囲に広がります。すると、それを標的として、周囲の免疫細胞ががん細胞に対して攻撃を開始し、さらにがん細胞が死滅していくのです。

さらには、このようながん細胞を攻撃できる免疫細胞が血流にのって全身に広がることで、遠く離れた転移巣に対しても治療効果を発揮することが期待されます。

また、このようながん細胞に対して免疫を獲得すると、がんの再発予防につながる効果も期待されています。

このように従来治療とはまったく異なる光免疫療法は、正常細胞への影響が極めて少ないことから近年とても注目されています。そして国内外で治験が行われ、2020年秋には国内でも製造販売承認を得ています。

次回は、光免疫療法の臨床試験結果などに触れていく予定です。

 

[参考資料]

Mitsunaga M et al., Cancer cell-selective in vivo near infrared photoimmunotherapy targeting specific membrane molecules. Nat Med. 2011 Nov 6;17(12):1685-91

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