がん免疫療法コラム

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最近承認された新型コロナウイルスに対する抗体カクテル療法

2019年12月に発生し、世界的大流行をもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についての研究はまさに日進月歩であり、とてつもない速度で新規治療が開発され、実際に診療で用いられはじめています。

つい先日もカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)がCOVID-19に対して厚生労働省より医薬品医療機器等法第14条の3に基づく特例承認を得て、すでに実臨床で用いられています。

今回は、「抗体カクテル療法」と呼ばれるカシリビマブ/イムデビマブについて解説します。

 

抗体とウイルス

「抗体」とは、ヒトの体内にいるリンパ球によって生み出されるタンパク質で、体に侵入してきたウイルスや細菌を無力化したり、弱めたりする働きを持ちます。体内には何千万という種類の抗体が存在し、それぞれのウイルスや細菌に対応しています。

ウイルスが体内に入ると、増殖して病気を発症しますが、抗体は入ってきたウイルスの表面にくっついて増殖させないように働きます。

 

抗体カクテル療法とは

今回承認されたカシリビマブ/イムデビマブは、2種類のモノクローナル抗体を組み合わせた製剤です。これら2つの抗体は、COVID-19から回復したヒトや遺伝子組換えされたマウスが産み出す膨大な種類の抗体の中から、特に新型コロナウイルスの表面にあるスパイク蛋白に強く働く抗体として選び出されました。ウイルスが変異しても効果を保てるように、2種類を組み合わせ「カクテル」にしています。

 

抗体カクテル療法の効果

抗体カクテル療法は、発症から早い時期に投与することで効果が発揮されるとされています。発症後はウイルスが増殖する時期で、この時期にウイルスに直接働き増殖を抑える抗体を投与することは理にかなっています。

発症から7日以内で、かつ酸素投与を必要としない患者さんを対象に行われた臨床試験では、この薬を投与された患者さんでは有意にウイルス量を減らしました。また、重症化リスク因子を1つ以上もつ外来患者さんを対象とした臨床試験では、入院または死亡に至った割合を約70%程度減らすことができたと報告されています。

上記臨床試験の結果に基づき、現在日本では発症7日以内で酸素投与を要さず、さらに重症化リスク因子(65歳以上、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、固形臓器移植後免疫不全、妊娠後期)を1つ以上持つ患者さんに投与が行われています。

このように抗体を用いた免疫療法は、がんのみならずウイルスに対しても有効性を発揮しているのです。

 

[参考資料]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き(第5.3版)

Weinreich DM et al., REGN-COV2, a Neutralizing Antibody Cocktail, in Outpatients with Covid-19. N Engl J Med. 2021 Jan 21;384(3):238-251. doi: 10.1056/NEJMoa2035002.

Weinreich DM, et al. REGEN-COV antibody cocktail clinical outcomes study in Covid-19 outpatients. medRxiv 2021.

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