がん免疫療法コラム
進行性がんに対する新たながん免疫療法の可能性
免疫チェックポイント阻害剤+腫瘍浸潤リンパ球療法
高い有用性を持つ免疫チェックポイント阻害剤は2014年に抗PD-1抗体であるオプジーボ®(ニボルマブ)が承認されてから、それぞれ異なる特徴を持った医薬品が多数承認されています。一方で、免疫チェックポイント阻害剤による治療を受けた患者は例外なく有効性が認められるというわけではなく、一定の割合で治療抵抗性を示すことが明らかになっています。
このような、免疫チェックポイント阻害剤に対して治療抵抗性を示す腫瘍の治療を目的とした「免疫チェックポイント阻害剤+腫瘍浸潤リンパ球療法」が新たな選択肢として誕生する可能性が出てきています。
腫瘍浸潤リンパ球療法とは?
がん免疫療法の新たな治療法として研究が進められている併用療法の中でも、「腫瘍浸潤リンパ球療法」という言葉に馴染みのない方が多いのではないでしょうか?
腫瘍浸潤リンパ球療法とは、患者本人の腫瘍組織に存在する腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocytes: TIL)を採取後、TILを体外で増殖させて患者の体内へ戻すことで抗腫瘍効果が期待できる治療方法です。
進行性の非小細胞肺がんに対する臨床試験を実施中
米国では2017年に抗PD-1抗体による治療に抵抗性を示した進行性の非小細胞肺がんに対してオプジーボとTIL療法の有効性と安全性を検証するための第1相臨床試験が開始されました。その臨床試験の結果では、抗PD-1抗体単剤では有効性が認められなかったにもかかわらず、TIL療法と併用することで20例の被験者のうち11人に腫瘍の縮小が認められ、さらに2人ではがんの兆候が全て消失(完全奏功)しました。
また、日本では子宮頸がんに対するTIL療法に関する研究が進められており、2021年1月には先進医療として許可されました。
TIL療法に関する研究は今後も盛んに行われることが予想でき、近い将来にはTIL療法を用いたがん免疫療法が新たな治療法として誕生するかもしれません。
[参考資料]
Nivolumab and Tumor Infiltrating Lymphocytes (TIL) in Advanced Non-Small Cell Lung Cancer
子宮頸がんを対象とした腫瘍浸潤リンパ球輸注療法(TIL療法)の先進医療実施について