がん免疫療法コラム
次々と誕生する新たなCAR-T療法を紹介
国内では3番目のCAR-T療法が誕生
CAR-T(Chimeric antigen receptor T cell)療法は、画期的ながん免疫療法のひとつとして世界中で研究開発が進められており、日本では2019年3月にノバルティスファーマのキムリアが国内初のCAR-T療法用の再生医療等製品として承認されています。2021年に入り、1月に第一三共株式会社のイエスカルタが国内2番目、そして3月にはセルジーンのブレヤンジが国内3番目のCAR-T療法用の再生医療等製品としてそれぞれ承認されております。
標的の異なるCAR-T療法も申請中
既に3つの選択肢があるCAR-T療法ですが、ブレヤンジの承認と同月にセルジーンからイデカブタジェン ビクルユーセル(ide-cel)が2つ目のCAR-T療法用の再生医療等製品として承認申請されました。既にide-celは米国でFDAから承認を受けており、欧米でも申請中です。
現在日本で承認されている3種類の再生医療等製品はCD19と呼ばれるタンパク質を標的として一部のリンパ腫や白血病の治療に用いられますが、今回新たに承認申請されたide-celの標的はCD19ではなくB細胞成熟抗原(BCMA:B Cell Maturation Antigen)です。BCMAを標的としていることで、ide-celは再発・難治性の多発性骨髄腫に対して有効性を示し、承認されると現時点では唯一の多発性骨髄腫に対するCAR-T療法が誕生することになります。
多発性骨髄腫に対する治療法はいくつかありますが、根治に繋がる治療法は確立されていないのが現状です。一方、ide-celは3種類以上の治療を受けた後に再発もしくは難治性の多発性骨髄腫の患者を対象とした臨床試験で73%の患者で治療効果が認められています。しかしながら、ide-celによる治療は重篤な副作用を引き起こすことがあるため、使用すれば効果が現れる可能性はあるものの、リスクを十分に考慮しながら治療法を選択していくことが必要です。
いずれにしても日本で承認申請の審査結果が出るのはまだ先ですが、もし承認されればide-celは多発性骨髄腫の画期的な治療法として期待できます。
[参考資料]
CAR T細胞療法「ブレヤンジ®静注」の製造販売承認を取得|ブリストル マイヤーズ スクイブ