がん免疫療法コラム
新たながん免疫療法を確立するためのクラウドファンディングが開始
肺がんに対する医師主導治験が実施中
現在、免疫チェックポイント阻害剤の抗PD-1抗体として知られているペムブロリズマブ(キイトルーダ®)と分子標的薬の一種でEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれる分子を標的とするネシツムマブ(ポートラーザ®)は各々単独もしくは別の治療薬との併用することで非小細胞肺がんの治療に用いられています。
上記の治療薬がそれぞれ標的とするPD-1とEGFRの発現量が多いほど治療効果は高いことが分かっており、さらにPD-1とEGFRの発現量は相関していると考えられています。つまり、ペムブロリズマブとネシツムマブを併用するとより高い治療効果が得られる可能性があります。
この仮説を検証するためにPD-1が高発現している非小細胞肺がん患者を対象にしてペムブロリズマブとネシツムマブの併用療法の有用性を検証する臨床試験が昭和大学など11施設で行われています。
治療効果の予測方法を確立するためのクラウドファンディング
上記の臨床試験に沿う形で、治療効果に関連する患者さんの特徴を探索するために、クラウドファンディングが実施されています。この研究では、同意を得られた患者さんのがん組織、血液、便を採取し、ペムブロリズマブとネシツムマブ併用療法の非小細胞肺がんに対する治療効果と関連する血液中や腸内細菌叢の指標を見つけ出すことが目的です。
このクラウドファンディングが成立して研究成果が得られると、事前に治療効果を予測することが可能となるかもしれません。すなわち、患者さんごとに有効かつ負担の少ない治療法を選択することに繋がります。
がん治療に関するクラウドファンディングは世界中で実施されており、もちろん日本でもいくつかあります。「できたら患者さんにとって良い結果が得られるけど費用がかかりすぎる」といって今まで断念してきた医師主導の臨床試験などは今後クラウドファンディングを活用することで実施できるようになるかもしれませんし、それによってより良い治療方法が見出されることが期待されます。
[参考資料]
5/18 オンライン記者会見の開催のお知らせ:医師主導治験に付随した探索的研究の実施を目的としたクラウドファンディングの実施について|昭和大学
PD-L1高発現未治療進行非小細胞肺がんに対するネシツムマブ+ペムブロリズマブ療法の第Ⅱ相試験|関連する治験情報【臨床研究情報ポータルサイト】