がん免疫療法コラム

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Vol.116【がん免疫療法における細胞老化④-T細胞およびNK細胞が関わるがん治療における老化について-】

・概要

前回までは、免疫細胞自体の老化について述べました。今回は、がん免疫療法における細胞毎の老化との臨床的な関連性について述べていきます。

 

・T細胞の細胞老化とがん治療

これまでに述べてきた通り、T細胞の細胞老化は、その抗がん作用を低下させ、さらに、化学療法前に老化したT細胞の数が多いと、化学療法誘発性の疲労を引き起こすリスクが高まることと関連していることが明らかとなっています。その一方で、老化は、SASPにより分泌されるケモカインや炎症促進分子を介して、腫瘍への免疫細胞の浸潤を促進する可能性も示唆されています。また、がん治療によって腫瘍の成長を停止させることはできても、それだけでは退縮や除去を引き起こすことはできないことがあり、老化した細胞を除去し、残った癌細胞を排除することができる最適な免疫システムを含む2段階の治療が必要であるとされています。そこで、老化細胞の除去を促進するための補助療法として、養子免疫細胞移植が有用である可能性があると考えられています。これらを総合した、免疫調整アプローチと老化促進剤や老化防止剤、免疫療法との併用や最適化は、腫瘍性疾患のステージあるいは老化の程度毎に応じた治療を可能にすると考えられ、今後の発展が期待されています。

ダサチニブやケルセチンなど、老化したがん細胞にアポトーシスを誘導し、肺線維症や加齢、放射線治療後の臨床症状を改善する老人性疾患治療薬が研究されています。その他、ナビトクラックス(ABT-263)のようなBCL-2ファミリー阻害剤や、フラボノイドのフィセチン、FOXO4-p53干渉ペプチド、HSP90阻害剤、mTOR阻害剤のラパマイシン、アナキンラ(抗IL-1)、トシリズマブ(抗IL6R)、インフリキシマブ(TNF-抗体)などのSASP因子を標的とする抗体などがあります。

 

・NK細胞による老化したがん細胞の除去

免疫療法の源として臨床で利用できるNK細胞は、さまざまな研究で実証されているように、腫瘍の老化細胞の除去に重要な役割を果たしていることがわかっています。パーフォリン-1を欠損させたマウスでは、T、NK、NKTリンパ球が機能せず、多臓器に多くの老化細胞が蓄積し、炎症の兆候やSASPの過剰発現が認められ、さらに、様々な臓器で早期老化がみられ、寿命の中央値が減少しています。NK細胞受容体は、NK細胞が介在する老化細胞のクリアランスに関与しています。NKG2Dはこれらのメカニズムに関与する最も研究されている受容体で、肝細胞がんのp53誘導老化細胞のクリアランスに重要な役割を果たしていることがわかっています。しかし、腫瘍の種類によっては相反する役割が示されており、例えば、肺腺癌では、NK細胞が老化した腫瘍細胞の除去を制限し、代わりに単球、好中球、間質性マクロファージの浸潤が誘導されたことが示されています。この点については、DNA損傷化学療法が様々なタイプの老化腫瘍細胞にSASPの分泌を誘導し、NK細胞による老化細胞のクリアランスを阻害することが指摘されています。進行した非小細胞肺がんでは、化学療法薬であるペメトレキセドが老化を誘導し、ULBPタンパク質のアップレギュレーションを介してNK細胞による腫瘍細胞のクリアランスに対する感受性を高めたことが示されています。その他、ドキソルビシンはSASPの分泌を介して老化を促進し、NK細胞によるADCCがパーフォリン依存的に増加することがわかっています。また、老化を抑制する効果が期待できる標的として知られる、mTORとTNFは、ともにNK細胞の活性化に必要とされています。ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体を介してmTORを阻害すると、NK細胞に脂質が蓄積し、抗腫瘍反応が鈍くなることが示されています。

本稿では、T細胞およびNK細胞を標的あるいは利用した治療と老化について述べてきました。様々な結果が認められており、新たな治療法となる可能性が秘められているものの、癌腫ごとに異なる結果が得られたり、知見が未だ少ないことから、これからの発展が期待されます。次回は、CAR-T療法を含むT細胞を標的としたがん免疫療法について述べていきます。

 

  1. Int. J. Mol. Sci. 2020, 21, 4346;
  2. Nature 566, 46-48 (2019)
  3. Cancers 2020, 12, 2976
  4. 領域融合レビュー, 7, e005 (2018)
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