がん免疫療法コラム

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Vol.115 治療効果と利便性の向上につながる抗体改良技術(6): スイッチ抗体

スイッチONOFF

スイッチ抗体とは?

抗体とは特定の分子に対して特異的に結合することでさまざまな作用を引き起こします。つまり、標的分子がある場所であればどこでも抗体は働くということです。その結果、腫瘍組織だけでなく全身にも存在する分子を標的とする抗体は全身で作用するため、思わぬ副作用が現れることがあります。

この課題の解決に有用な抗体がスイッチ抗体です。スイッチ抗体の「スイッチ」とは普段から使っているスイッチと同じく「ON」と「OFF」を切り替えるという意味で、ここでは抗体が働く場所と働かない場所を区別することを意味しています。

そして、腫瘍組織に特異的な物質を抗体の働きに関するスイッチにできれば、真に抗体が働いてほしい腫瘍組織のみで抗体が作用することが可能となります。

現在臨床試験を実施中

中外製薬が2020年3月からスイッチ抗体であるSTA551の第1相試験を日本とヨーロッパで実施しています。

このスイッチ抗体は、腫瘍組織で豊富に存在するATP(アデノシン三リン酸)が存在する場所でのみ抗原と結合して作用を発揮でき、実際に非臨床試験では通常の抗体と比べてATP存在下で特異的に作用することが明らかになっています。

ちなみに、ATPは細胞が活動するときに必須となる物質で体内には存在していますが、そのほとんどが細胞内に存在しているため、正常の細胞外組織や血液中にはあまり存在していません。一方で、がん細胞は急速に増殖するためにATPの産生が盛んに行われ、結果として腫瘍組織では細胞外ATP濃度が正常組織に比べて上昇しています。

 

STA551の他にも中外製薬が開発したスイッチ抗体を作製する技術(Switch-Ig®)を利用して新たなスイッチ抗体の開発が進められています。まだ臨床試験の結果は明らかになっていませんが、今後の抗体医薬品の主力にスイッチ抗体が名を連ねる日が来るかもしれません。

 

[参考資料]

Mika Kamata-Sakurai et al., Antibody to CD137 Activated by Extracellular Adenosine Triphosphate Is Tumor Selective and Broadly Effective In Vivo without Systemic Immune Activation, Cancer Discov., 11(1): 158-175 (2020).

新製品開発状況(開発パイプライン)|株主・投資家の皆さま|中外製薬

がん微小環境における代謝と免疫応答

 

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