がん免疫療法コラム

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Vol.105がん免疫療法における間葉系幹細胞の多面的な役割について②

・概要

前回の記事では、間葉系幹細胞の特徴と、免疫細胞との関係性について記述しました。本稿では、間葉系幹細胞とがん免疫療法との関連性、また、間葉系幹細胞ベースのがん治療の臨床的可能性について説明します。

 

・間葉系幹細胞ベースの細胞療法を用いた臨床研究

間葉系幹細胞ベースの細胞療法は、現在までに40以上の臨床研究で評価されています。例えば、造血器腫瘍の患者さんに対して、間葉系幹細胞とシクロフォスファミドと呼ばれる薬剤を投与するフェーズ3の臨床研究や、改変したIL-12を発現させた間葉系幹細胞を患者さんに投与するフェーズ1の臨床研究がこれまでに実施され、安全性や有効性の確認が行われています。これらの臨床研究の結果によっては、比較的早くに間葉系幹細胞ベースの細胞療法が承認される可能性が期待されています。

 

・間葉系幹細胞の利用

さらに、ドラッグデリバリーの媒体としても開発が進められています。例えば、腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞に送達するために利用され、臨床的に腫瘍細胞の死滅を選択的に誘導することが確認されています。さらに、間葉系幹細胞は遺伝子操作によって腫瘍細胞特異的に送達させる割合を高めたり、抗癌作用を高めたりしてから利用することが可能になっています。加えて、選択された免疫調節性サイトカインを過剰発現するような間葉系幹細胞も開発されており、例えばIL-12を発現する間葉系幹細胞の投与によって、抗腫瘍T細胞応答を増強し、これまでの技術である組み換えアデノウィルスによるIL-12の投与よりも腫瘍増殖を減少させたことが示されています。これらの結果から、遺伝子改変された間葉系幹細胞は有望な治療プラットフォームを提供する可能性が示唆されています。

 

・まとめ

間葉系幹細胞ベースの細胞療法は、実際に多くの臨床研究が実施されており、がん免疫のみならず再生医療や創傷治癒領域において最も有望な治療薬候補の1つとして考えられています。しかしながら、研究開発がまだ発展途上であり、いくつかの問題点が残されています。まず、間葉系幹細胞は純粋な細胞集団ではなく、間質細胞の不均一な混合物であり、形態学的および異なるいくつかの細胞サブタイプで構成されていることから、それらの特性を更に明らかにする必要があります。実際に、間葉系幹細胞には腫瘍血管新生を促進する機能や、腫瘍細胞の転移を促進する能力、薬剤耐性の亢進等、腫瘍細胞をサポートしてしまうような機能も知られています。また、間葉系幹細胞は、免疫調整機能を有しているものの、それが腫瘍細胞にとって促進的あるいは抑制的に働くのかどうかが、全て明らかになっているわけではありません。これらの重大な異質性が、治療に影響を与える可能性が残されています。したがって、間葉系幹細胞の全体像を再検討することが重要とされ、まずは間葉系幹細胞の特性評価と、そのサブタイプを再定義すること、次に、間葉系幹細胞のうち、有益な細胞集団の採取できるような技術の開発が必要とされています。これらの欠点が解消されることによって、これまでに無かった間葉系幹細胞によるがん免疫を介した、新しいがん治療技術が確立されることが期待されます。

・参考文献

  1. Seminars in Cancer Biology, Volume 60, February 2020, Pages 225-237
  2. Stem Cells, 28 (3) (2010), pp. 585-596
  3. Stem Cells Int. (2017), Article 4015039
  4. Front. Immunol., 9 (2018), p. 262
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