がん免疫療法コラム

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Vol.103 治療効果と利便性の向上につながる抗体改良技術(2): バイスペシフィック抗体

抗体医薬品は日々重要性を増している

免疫チェックポイント阻害剤はがん免疫療法で用いられる治療薬で、抗PD-1抗体・抗体PD-L1抗体・抗CTLA抗体といったように抗体が使われています。また、抗体を使用した医薬品は自己免疫疾患の治療薬としても利用されるケースは増加傾向です。

今回は、抗体の価値最大化を目指した成果のひとつであるバイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)を紹介します。

バイスペシフィック抗体とは?

そもそも抗体は基本的にアルファベットの「Y」のような形をしています。そして分岐した先端2カ所が抗原を認識、そして抗原に結合することで抗体としての機能を発揮します。また、通常の抗体の場合、一種類の抗体に対して一種類の抗原を認識することしかできません(結合部位は2カ所であるため、抗体:抗原=1:2の割合で結合します)。

しかしながら、通常の抗体を改変して作製されたバイスペシフィック抗体は2カ所の結合部位がそれぞれ異なる抗原を認識するように設計されており、一種類の抗体で二種類の抗原と結合することができます。この技術は日本で既に承認されている抗体医薬品に利用されており、その代表例は中外製薬株式会社が開発した血友病Aの治療薬「ヘムライブラ」です。

バイスペシフィック抗体とがん免疫療法の関係は?

ただ残念ながら、日本でバイスペシフィック抗体ががん免疫療法の治療薬として承認されている例はまだありません。ただし、第一三共株式会社2019年のプレスリリースでがん免疫療法に用いるバイスペシフィック抗体の商業化に関する権利を取得したことが発表されました。

また、ヘムライブラの開発に成功した中外製薬株式会社もがん免疫に着目し、バイスペシフィック抗体作製技術を用いた抗体をいくつか開発し (開発コード: ERY974、RG7828、RG6026)、現在臨床試験を実施しています。

現段階では最も進んでいても臨床試験ののステージは第1相であるため、すぐに使用できるようになるわけではありませんが、近い将来にはがん免疫療法治療薬としてのバイスペシフィック抗体が誕生するかもしれません。

 

[参考資料]

前田敦彦ら 新規抗体改変技術とその抗体医薬品への応用 ファルマシア 51:(5) 424-428 (2015)

Christoph Rader, Bispecific antibodies in cancer immunotherapy, Curr. Opin. Biotechnol., 65:9-16 (2020)

第一三共株式会社 バイスペシフィック抗体に関するZymeworks社との共同研究におけるオプション権の行使について (2019年04月26日)

Zymeworks Pipeline (Jan. 24th, 2021)

中外製薬 新製品開発状況 (2020年10月22日)

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