がん免疫療法コラム

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Vol.101 治療効果と利便性の向上につながる抗体改良技術(1):抗体-薬物複合体

 

がん免疫療法でも抗体は重要な存在

がん免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤・がん免疫ワクチン・エフェクターT細胞などを用いた治療が行われています。この中でも免疫チェックポイント阻害剤は抗PD-1抗体・抗体PD-L1抗体・抗CTLA抗体といったように抗体が使われています。また、免疫チェックポイント阻害剤以外にも抗体を用いた医薬品は多くあります。

そんな、近年の医療で欠かすことのできない存在になりつつある抗体の治療効果や利便性のさらなる向上を目指した改良技術がいくつか開発されていることをご存知でしょうか?

今回は、その中でも抗体ー薬物複合体(ADC: Antibody-Drug Conjugate)を紹介します。

ADCとは?

ADCは抗体と低分子化合物を適切なリンカーを介して結合させたもので、抗体の持つ高い組織選択性と低分子化合物の持つ殺細胞性を利用しています。また、リンカー部分はADCが標的細胞に到着してから外れるように細かい設計がされています。ADCを体内に投与すると、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して低分子化合物をがん細胞へ直接届けることで、低分子化合物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。

つまり、ADCはがん細胞特異的に低分子化合物の効果を発揮させるため、治療効果の向上が期待できるだけでなく、低分子化合物が正常細胞を攻撃して重篤な副作用をもたらす可能性を低減させる効果もあります。

日本でも既にADCは承認されており、中外製薬の「カドサイラ」と第一三共の「エンハーツ」があり、いずれも「HER2」と呼ばれる乳がん細胞などで発現するタンパク質を標的にしています。また、エンハーツは抗体と低分子化合物の割合が必ず1:8となるような高い技術が用いられていることが特徴です。他にも、現在日本で臨床試験を行っているADCがいくつかあります。

 

がん免疫療法とADCの関係

残念ながら、現時点では日本国内でADCががん免疫療法として利用されている例はありません。ですが、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体とADCであるエンハーツの併用療法で相乗的に治療効果が向上することが報告されています。また、アストラゼネカが開発を進めている抗PD-L1抗体であるイミフィンジの利用価値最大化を目指した取り組みの一環として、エンハーツとの併用療法での開発も検討されています。

 

[参考資料]

抗体-薬物複合体開発の発展と現状

Tomomi Nakayama Iwata et al., A HER2-Targeting Antibody-Drug Conjugate, Trastuzumab Deruxtecan (DS-8201a), Enhances Antitumor Immunity in a Mouse Model, Mol. Cancer. Ther., 2018, 17(7):1494-1503.

Astrazeneca Imfinzi recommended for approval in the EU by CHMP for less-frequent, fixed-dose use in unresectable non-small cell lung cancer (28/12/2020)

 

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