がん免疫療法コラム

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Vol.99【2020年版】がん免疫療法の現在と今後の展望

第4のがん治療法: がん免疫療法

がんの治療法として長く一般的に用いられていたのは手術・放射線療法・化学療法になりますが、これらは侵襲的で患者への負担が大きいにもかかわらず、有効性が不十分であったり再発することがありました。そこで、近年では限りなく非侵襲的ながん治療法としてがん免疫療法が大きな注目を集め、急速に普及しています。一般的にがん免疫療法というと、オプジーボを代表とする「免疫チェックポイント」を阻害する薬剤が有名ですが、他にもがん免疫ワクチンや遺伝子導入T細胞(CAR-T)療法などもあります。がん免疫療法は全体的に高価であったり、まだ十分な研究がなされていない分野であることからがん治療法として改善していくことが容易に想像できます。

がん免疫ワクチン療法の現在

「ワクチン」と聞くと、感染症などへの罹患を予防する目的で接種するイメージが強いと思います。子宮頸がんワクチンはこの認識に当てはまりますが、がん免疫ワクチンは少し意味合いが異なります。

20世紀後半になると、本来は異物であるはずのがん細胞がヒトの体内で免疫系の働きから回避されていた理由が徐々に解明されていき、がん細胞と生体の免疫応答の関係は「がん免疫編集」と呼ばれるようになりました。このメカニズムを基にして治療へ応用したのががん免疫療法です。がん免疫ワクチンもがん免疫編集の考え方を基に、がん細胞に対する免疫を高めることで、がんの進行を抑えることを目的としています。また、基本的にがん免疫ワクチンはがん細胞にのみ影響を与える治療法で、がん免疫に関連する細胞・タンパク質・核酸(DNAやRNA)用いられます。

がん免疫ワクチンに関する研究開発は盛んに行われていますが、残念ながら十分な有効性が得られずに開発中止となっているケースが多くあります。その結果、2020年現在で承認されているがん免疫ワクチンは前立腺がんに対する樹状細胞ワクチンであるProvenge(一般名: sipuleucel-T)のみです(米国で2010年に承認)。したがって、未だ改良を含めたがん免疫ワクチンの研究開発を行う余地はあり、現在も世界中で開発が進められています。

がん免疫ワクチン療法の未来

がん免疫ワクチンの承認品目数が少ない理由はいくつかあり、例えば標的部位への送達が不十分・単独での有効性には限界がある・がん免疫ワクチンの臨床評価方法が確立されていないなどです。

がん免疫ワクチンには血液中で非常に不安定な核酸が用いられることがあります。したがって、血液中でも安定に存在できるような核酸の乗り物の開発が進められています。

単独での不十分な有効性に関しては、併用した免疫チェックポイント阻害剤の有効性を向上させる目的でがん免疫ワクチンと免疫チェックポイント阻害剤の併用療法に関する臨床試験が進められています。

上記のような課題の解決だけでなく、がんの発症予防を目的としたワクチンに関する研究も進められており、2021年以降もがん免疫ワクチン療法はさらなる発展が期待されています。

[参考資料]

Yuka IgarashiTetsuro Sasada,  Cancer Vaccines: Toward the Next Breakthrough in Cancer Immunotherapy, J Immunol Res. 5825401, Nov 17;(2020).

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