がん免疫療法コラム

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がん免疫療法における先進的なバイオマテリアルおよびドラッグデリバリーシステムについて②

・概要

前回の記事では、がん免疫療法におけるリポソームの内側の修飾について説明してきました。今回の記事では、リポソームの外側に修飾が為されたバイオマテリアルと、ナノ粒子について説明します。

 

・リポソームの設計-リポソームの外部に関して-

リポソームの腫瘍微小環境への応答性を高めるために、高pH感受性ポリマーをリポソーム表面に修飾することで、Th1サイトカインの分泌を促進し、腫瘍の治療効果を増強したり、pH感受性リポソーム封入抗原とIFN-γ遺伝子を含むリポプレックスを用いて、抗原遺伝子とIFN-γ遺伝子を同時に搭載する共送達システムを設計し、強い治療効果をもたらしたりすることで、抗腫瘍免疫を促進することができることが示されています。その他、T細胞にあらかじめ付加したリポソームを用いることで、T細胞のがん組織への浸潤をより効率的に改善できることが示唆されています。前述のCTLA-4阻害抗体を含むリポソームの抗腫瘍効果が検討され、CTLA-4のPEG化リポソーム製剤が抗腫瘍免疫応答を改善することが証明されています。また、腫瘍部位へ薬剤が効率よく運搬されるように、特殊なペプチドで修飾したリポソームも開発されており、より抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球反応を達成したという報告もあります。これら以外にも、光熱免疫療法とリポソームを併用することで抗腫瘍免疫応答を増強することが示されており、フルオロフォアを装填したリポソームや、免疫アジュバントで修飾したリポソームによって、免疫細胞を相乗的に活性化したり、有害な作用を低減、さらにはリポソームをリアルタイムでモニタリング、すなわち腫瘍部位に効果的に集積しているかどうかを確認することができるような技術が開発されています。

 

・脂質/カルシウム/リン酸(Lipid/Calcium/Phosphate: LCP)ナノ粒子に関して

LCPナノ粒子は、脂質でコーティングされたリン酸カルシウムから作られています。抗CTLA-4モノクローナル抗体と、腫瘍抗原MUC 1をコードするLCPベースのmRNAワクチンを、免疫細胞の1つである樹状細胞に結合させ、抗腫瘍効果を促進したという結果が得られています。この結果から、LCPが腫瘍関連RNAの効果的な輸送担体であることが証明されたと考えられます。また、LCPを用いた癌細胞模倣ワクチン(αHSP 70 p-CM-CaP)は、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍の浸潤を抑制することが報告されています。他にも、スニチニブをカプセル封入したポリマーミセルと同時に、チロシナーゼ関連タンパク質2(Trp 2)ペプチドおよび免疫細胞を活性化させるCpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチド(CpG-ODN)を含んだLCPベースのワクチンを皮下注射したところ、進行メラノーマに対する免疫療法の効果を増強できることが証明されています 。

これらの知見から、LCPナノ粒子の中に薬剤や生体分子を封入したワクチンによって、薬剤、あるいは生体分子単体を注射するよりも効率良く免疫細胞を活性化させたり、腫瘍細胞を死滅させる可能性が示唆されています。次回以降の記事では、ポリマー系バイオマテリアル等について紹介していきます。

 

・参考文献

  1. Acta Pharmacol Sin. 2020 Jul; 41(7): 911–927.
  2. Nat Rev Drug Discov. 2019 Mar; 18(3): 175–196.
  3. 膜(MEMBRANE),34(6),328­335(2009)
  4. Drug Delivery System 28― 3, 2013
  5. J Biomed Nanotechnol. 2018;14:98–113.
  6. https://jp.freepik.com/photos/background

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