がん免疫療法コラム
がん免疫療法の動向 Part.4 : メッセンジャーRNAワクチン
メッセンジャーRNAワクチンとは
メッセンジャーRNA(mRNA)はDNAやRNAを代表とする核酸の一種であり、細胞内のタンパク質発現と密接に関与しています。日本を含む全世界でmRNAを標的とする核酸医薬品はいくつか承認されているものの、体内に直接投与してもすぐに分解されてしまうことからmRNA自体が医薬品として承認された例は未だありません。しかしながら、mRNAが医薬品として承認されることでもたらされるメリットが非常に大きいと考えられているため、感染症やがんに対するmRNAワクチンを中心として研究開発が盛んに行われています。
がんワクチン療法としてのmRNAワクチン
mRNAワクチンはペプチドや細胞を使ったワクチンと同様に近年注目を集めています。mRNAをワクチンとして用いることで、抗体を中心となる液性免疫だけでなくマクロファージなどの免疫担当細胞が直接標的細胞を攻撃する細胞性免疫を誘導できます。また、mRNAの配列は比較的容易に変えることができるため、個別治療に対応できる点も魅力的です。
がんワクチン療法を目的としたmRNAワクチンはいくつか臨床試験が実施されており、その中で有力な候補のひとつにBioNTech社とGenentech社が共同で開発を進めるmRNAワクチン(開発コード: RO7198457, RG6180, BNT122)があります。治験薬の安全性や薬理作用を確認する第一相試験は終了しており、現在第二相試験を実施しています。
その他にBioNTech社が開発を進めているmRNAワクチンには、mRNA最大の弱点である体内での分解を防ぐために、リポソームと呼ばれる脂質膜で覆われたナノサイズの粒子に封入されたmRNAワクチン(開発コード: BNT111)の開発もしています。このmRNAワクチンもメラノーマを対象疾患として実施した第一層試験が終了しています。
これら以外にも多数のmRNAワクチンの臨床開発が進んでいるため、近いうちにmRNAワクチンが医薬品として承認される日が来るかもしれません。
[参考資料]
An RNA vaccine drives immunity in checkpoint-inhibitor-treated melanoma
がん免疫療法開発のガイダンス2015 早期臨床試験の考え方~安全で効果的な開発を目指して~ 報告書
Therapeutic vaccines for cancer: an overview of clinical trials