がん免疫療法コラム
がん免疫療法の動向 Part.2: がん光免疫療法
がん光免疫療法とは
がん細胞に特異的に存在するタンパク質を抗原として認識する「抗体」に人体に直接影響の少ない波長の光(750~800 nm 程度)を照射することで光化学反応を引き起こして細胞を破壊する「光感受性物質」を結合させた「抗体薬物複合体」を用いて行うがん治療をがん光免疫療法と呼びます。
この方法により抗体薬物複合体が結合しているがん細胞のみを直接攻撃することができるため、正常細胞に与える可能性が限りなく低くなります。さらに、破壊された細胞から放出される抗原に対する抗体を体内で作り出すことで二次的な抗腫瘍効果も期待されています。
日本で承認
2020年9月25日にがん光免疫療法で用いる抗原抗体複合体(アキャルックス®点滴静注250mg; 楽天メディカルジャパン株式会社)が切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌に対して日本で承認されました。頭頚部癌は鼻・口・のどなど顔から首までの範囲にできるがんを指し、全てのがんの5%程度と発生頻度は低くことが特徴です。
アキャルックスを点滴静注後に同月に医療機器として承認を受けた BioBlade® レーザーシステムを用いてレーザーを照射することで殺細胞効果が得られます。今回のアキャルックスに対する承認は「条件付き早期承認制度」が適用されており、有効性と安全性を検証しながら治療を行っていくことになります。
アキャルックスには上皮成長因子受容体(EGFR)を抗原として認識するセツキシマブが抗体として用いられているため、EGFRを発現するがん細胞には治療効果があると想定できます。今後はアキャルックスの適応拡大などでがん光免疫療法を適用できる範囲が拡大していくことが望まれています。
【参考資料】
楽天メディカルジャパン Press Release (2020年9月25日)