がん免疫療法コラム
がん免疫療法の動向 Part.1 : がん免疫ワクチン
がん免疫ワクチンとは
免疫チェックポイント阻害薬などで知られるがん免疫療法のひとつに「がんワクチン療法」があります。がんワクチン療法とはがん細胞で高発現しているがん抗原由来のペプチドや核酸をワクチンとして接種し、がん細胞に対する免疫を獲得して抗腫瘍効果を発揮する治療法です。残念ながら現時点で国内承認されているがんワクチンはありませんが、いくつかの臨床試験が行われており、安全性・有効性を検証しています。
どんな作用があるの?
2020年10月時点で最も国内開発が進んでいる5種類のペプチドを含むがんペプチドワクチン(S-588410,塩野義製薬)の第2相試験では、食道がん患者に対してS-588410を投与していました。その結果、がん組織内の微小環境でCD8陽性Tリンパ球やPD-L1が増加しました。これは、免疫チェックポイント阻害薬であるPD-L1抗体や抗PD-1抗体との併用が有効である可能性を示しています。
現在は第3相試験中
現在、S-588410は食道がんと膀胱がんを対象として開発が進んでおり、食道扁平上皮がんの術後補助療法を対象として大規模で有効性と安全性を検証する第3相試験が実施されている最中です。現在実施中の試験は2021年の第1期に結果速報が出る予定となっており、結果次第では国内発のがん免疫ワクチンの誕生が現実味を帯びてきます。
[参考資料]
食道がん患者を対象としたがん特異的ペプチドワクチン S-588410 に関する 探索的研究成果の論文公表のお知らせ