がん免疫療法コラム

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B細胞が免疫療法への反応性に関与 Vol.75

免疫チェックポイント阻害剤について調べていると「PD-1」や「T細胞」という言葉を目にしたことがある方は多いと思います。実際にこれらは薬の作用機序と関係しているために薬の有効性を予測する上で重要なバイオマーカーだと言われています。最近、「B細胞」という免疫にかかわる細胞が新たなバイオマーカーとして注目されているため、今回は免疫チェックポイント阻害剤の効果とB細胞の関係を紹介します。

がん免疫療法の治療効果を予測する方法
がん免疫療法全般を効果的に実施するために、T細胞を代表とする免疫担当細胞がどのように存在するかを知ることは非常に重要です。免疫チェックポイント阻害剤に限定しても同様で、腫瘍組織内に特殊なT細胞やがん細胞に薬が直接アタックするPD-L1というタンパク質の有無を治療を開始する前に検査することがあります。しかしながら、これらの検査を実施した後に治療を開始した場合でも免疫チェックポイント阻害剤の効果が十分に得られないことがあります。つまり、これらのバイオマーカーと組み合わせることで、さらに精度良く治療効果が予測可能なバイオマーカーが求められています。

B細胞とは
B細胞とは免疫担当細胞の1種であり、T細胞の力を借りることによって体内に入ってきた異物に対する抗体を産生することができます。産生された抗体は異物を認識することで、異物の働きを抑えたり他の免疫担当細胞を活性化させる働きがあります。さらに、一度認識した異物が再び生体内に入り込んだときに速やかに免疫反応が起こる仕組みにもB細胞が深く関わっています。

がん免疫療法とB細胞の関係
免疫チェックポイント阻害剤に直接関連するバイオマーカーはT細胞やPD-L1などで、一見するとB細胞はあまり関係ないように思います。しかしながら、2020年1月に発表された論文では、B細胞と免疫チェックポイント阻害剤の有効性には関連があることが示唆されました。
がん組織の周辺は通常とは異なる環境となっており、その微小環境の中にT細胞など免疫に関わる細胞やタンパク質が多く存在する、三次リンパ組織と呼ばれる構造体が形成されます。三次リンパ組織の形成にB細胞が多く寄与している患者では免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療の奏効率が他と比べて上昇しました。また、がん組織周辺の微小環境中に存在する免疫担当細胞や関連するタンパク質を調べたところ、それらが多く存在していると生存期間が他と比較して延長し、その中でもB細胞が豊富な場合は他のバイオマーカーが十分でなくても生存期間に正の影響を与えることが分かりました。
以上のことから、B細胞は免疫チェックポイント阻害剤の有効性だけでなく、生存期間にも関与していると言えます。

まとめ
B細胞とがん治療の効果や生存率に関連性があることが初めて報告されました。近い将来、B細胞をT細胞やPD-L1など既存のバイオマーカーと組み合わせて用いることで、より精度良くがん免疫療法の治療効果を予測し、今より効果的な治療を実施できる日がくるかもしれません。

 

[参考資料]
Florent Petitprez et al., “B Cells Are Associated With Survival and Immunotherapy Response in Sarcoma” Nature, 2020 Jan;577(7791):556-560. doi: 10.1038/s41586-019-1906-8.

Catherine Sautès-Fridman et al., “Tertiary Lymphoid Structures in the Era of Cancer Immunotherapy” Nat. Rev. Cancer, 2019 Jun;19(6):307-325. doi: 10.1038/s41568-019-0144-6.

岩堀幸太ら “がん免疫療法の効果予測診断法” ファルマシア, 2017;5(1):45-48. doi: org/10.14894/faruawpsj.53.1_45.

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