がん免疫療法コラム

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日本国内で実施されているがん免疫療法の臨床試験とそのメカニズム(2020年3月初旬時点)

近年、がん免疫療法によるがん治療が注目されています。これまでの抗がん剤とは作用する場所が異なるため、効き目や副作用が異なっていることが特徴です。しかし、未だ臨床試験の段階にある抗がん剤も多く、誰もが適応されるわけではありません。

本稿では、日本国内において実施中のがん免疫療法の臨床試験の紹介と、各薬剤のメカニズムについて紹介します。過去のコラムでも、本稿の各がん免疫療法について詳しく紹介しておりますので、そちらも是非ご覧ください。なお、紹介した臨床試験は、最新情報ではあるものの一部の抜粋であり、また必ずしも参加可能ではないことにご留意ください。

 

♦がん免疫療法の臨床試験①CAR-T療法

がん免疫療法の1つにCAR-T(Chimeric Antigen Receptor-T)療法があります。CAR-T療法を用いた日本国内で実施中の臨床試験のうち、これから初めてCAR-T療法を受ける方が対象のものは少なくとも3つあり、それぞれ再発・難治性の多発性骨髄腫、進行性のB細胞性非ホジキンリンパ腫、再発・難治性の急性リンパ性白血病を対象としています。

CAR-T療法のメカニズムは、図1の通りで、まずは患者さんから採取した血液中から、T細胞と呼ばれる免疫細胞を取り出します。次に、がん細胞を特異的に攻撃できるようにT細胞の遺伝子を改変し(CAR遺伝子の導入;CAR-T細胞になります)、患者さんの体内にCAR-T細胞を戻します。最終的に、体内に戻されたCAR-T細胞ががん細胞を攻撃することで、抗がん作用を発揮します。メリットとしては、がん細胞の免疫回避機構(がん細胞は、体内の免疫細胞による攻撃から逃れるために、免疫細胞に認識される表面の目印を隠します。これをがん細胞の免疫回避機構と呼びます。)を無視して効果を発揮することができ、これまでは治癒が難しかったような症例でも効果を示すことに成功しています。

CAR-T療法のメカニズムの図

図1. CAR-T療法のメカニズム(引用1より)

 

♦がん免疫療法の臨床試験②光免疫療法

光免疫療法とは、光吸収物質 IR700 と結合したモノクローナル抗体(分子標的薬)を用いた治療法です。図2の通り、IR700結合抗体が標的細胞(がん細胞)に結合した後、近赤外線を照射すると励起したIR700 が細胞膜を傷害し,標的細胞特異的に細胞死を誘導することで、抗がん作用を発揮します。

光免疫療法を用いた日本国内で実施中の臨床試験は、現在では少なくとも3つあります。それぞれ、頭頚部癌、切除不能な進行・再発胃がん・食道がんを対象としています。

図2. 光免疫療法のメカニズム(引用2を改変)

 

【引用】

  1. 信州医誌,66⑹:425~433, 2018
  2. 日耳鼻, 122: 22-28, 2019

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