がん免疫療法コラム

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ウイルスに対する免疫の働き Vol.59

Immune response

HIV感染に対する免疫応答(参考文献1より)

■ウイルスとは?

ウイルスとは、小さなタンパク質の殻(カプシド)の中に核酸(DNAまたはRNA)が収まった構造体です。

大きさとしては一般的な細胞の1000分の1~100分の1程度です。細胞質を持たないので、ウイルスだけでは増殖できません。そこで、動植物の細胞に入り込み、入り込んだ細胞の代謝系やエネルギーを利用して自分に都合の良い物質をつくり増殖します。

ウイルスの中には、カプシドの外側にさらに膜(エンベロープ)を持つものもあります。例えば、インフルエンザウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルスなどです。最近話題のコロナウイルスもこのタイプです。

エンベロープを持たないウイルスもあります。ノロウイルス、A型肝炎ウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルスなどです。

エンベロープは、ウイルスが、感染した細胞から、その細胞の細胞膜を一部まとって出てくるものです。もっとも、そのウイルスは、他の細胞に感染するのに都合の良い構造を感染細胞の細胞膜にあらかじめつくっておきます。エンベロープは脂質などからできているため、エンベロープを持つウイルスは、生体外であれば、アルコールなどで比較的簡単に失活(いわば殺菌)できます。

■ウイルスに対する免疫の働き

ウイルスに対する免疫の働きのひとつは細胞性免疫です。これはウイルスの場合、ウイルスに対して直接働くのではなく、ウイルスが感染した細胞を攻撃する方法です。例えば、細胞傷害性T細胞(CTL)がパーフォリンやグランザイムを放出して感染細胞を殺します。

ウイルスは感染細胞の中で増殖しますから感染細胞が殺されてしまうと、少なくとも増殖はできません。

ウイルスに対する免疫の働きのもうひとつは液性免疫です。液性免疫では抗体がウイルスに結合してウイルスが細胞に感染するのを妨げます。

このような働きは同時に起こるというよりは、ある程度の時間差を持って起こります(冒頭のグラフ参照)。

■ウイルスとがんとの関係

ところで、ウイルスに感染した細胞はなぜ免疫系によって感染細胞だと認識されてしまうのでしょう。ウイルスは感染細胞の中で増殖しますから細胞の中に隠れていれば外からはわからないような気もします。

実は、細胞の表面には主要組織適合遺伝子複合体(MHC)というものが存在します。これは細胞内のさまざまなタンパク質断片(ペプチド)を細胞膜表面に提示してしまうのです。このため、細胞内に隠れていてもバレてしまうわけです。

MHCには大きく分けて2種類が存在し、クラスI分子、クラスII分子と呼ばれています。クラスII分子は細胞外から取り込んだもの由来の抗原を提示します。細菌に感染した場合はクラスIIが活躍します。

細胞内で産生された抗原はクラスIの担当です。従って、ウイルス感染の場合はクラスI分子が活躍します。ただ、クラスI分子の働きを抑えるウイルスもいます。もっとも、この戦略はデメリットもあります。免疫系はそうした異常現象を察知してそれを非自己と認識する可能性があるからです。

がん細胞も正常細胞にはないがん抗原を産生しますから、クラスI分子ががん抗原を提示します。がんとウイルスは意外なところに共通点があります。

 

参考文献

  1. DOJIN NEWS No.127/2008 エイズからみた感染症研究の最前線その7 上野 貴将「HIVに対するヒトCTL免疫応答」https://www.dojindo.co.jp/letterj/127/review/02.html
  1. 荒瀬 尚, 白鳥 行大「NK細胞によるウィルス感染細胞認識機構」ウイルス第54 巻 2 号 pp.153-160, 2004
  2. 宮内 浩典「エンベロープウイルスの宿主細胞への侵入過程」ウイルス 第59 巻 第2 号,pp.205-214,2009
  3. ひと目でわかるウイルスと病気― ウイルスを知る – Medical Tribune (special edition), 2014 https://medical-tribune.co.jp/mtpronews/se1412/se_1412_p2-4.pdf
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