がん免疫療法コラム

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がん遺伝子パネル検査

「がん遺伝子パネル検査」は、がん組織から数10〜数100種類のがん関連遺伝子の変異の有無について調べる検査です。

がんは遺伝子の異常により発生することが知られています。ヒトの遺伝子数は2万数千個と言われていますが、そのうち、がんの発生に関係していることがわかっているのは数100個です。がんの治療法は近年急速に進化していて、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、免疫療法などさまざまな治療法が開発されてきています。がん細胞に含まれる遺伝子異常の種類や数によりがんの性質は異なり、適切な治療法も変わってくるため、がん細胞の遺伝子情報を調べることが重要になってきました。従来、がんの治療方法は胃や肺など部位別に考えられていましたが、患者ごとにがん組織の遺伝子情報に基づいて適切な治療を行なっていくものを「がんゲノム医療」と呼び、患者一人一人に最適な治療を提供できる可能性が期待されています。がん組織の遺伝子情報を調べる「がん遺伝子パネル検査」はがんゲノム医療の出発点です。

昨年から、2つの「がん遺伝子パネル検査」が保険で利用できるようになりました1。保険価格は56万円で、自己負担額は保険の自己負担割合により、3割負担なら16万8千円、1割負担なら5万6千円などとなります。検査を受けることができる患者は、標準治療がない固形がん患者又は局所進行若しくは転移が認められ標準治療が終了となった(または終了が見込まれる)固形がん患者で、全身状態や臓器機能などから化学療法の適応になる可能性が高いと主治医が判断した場合に限られます。利用できる病院も限定されています2,3

次に検査の流れを紹介します。検査にはがん組織が必要になるので、以前の手術や検査で取り出した組織を使用したり、使える組織がなければ新たに生検を行います。血液採取が必要な場合もあります。採取した組織は次世代シークエンサーという装置を使い、一度に多数の遺伝子情報を読み取ります。見つかった遺伝子異常が病的なものかどうか臨床的意義が分析され、病的な異常については治療薬があるかどうかを調べてレポートにまとめられ、主治医を通じて患者に結果が説明されます。

保険適用されている「がん遺伝子パネル検査」の1つである「OncoGuide™️ NCCオンンコパネルシステム」ではこれまでの研究で検査の結果により約10%の患者に個々の遺伝子異常に合う治療を行うことができたと報告されています4。せっかく検査したのに10%というは低いように思われるかもしれませんが、これはまだ病気との関係がよくわかっていない遺伝子異常の種類がたくさんあること、遺伝子異常に対応した治療薬が限られていることによるものです。今後、多くの患者の検査データと治療についての情報が蓄積され、治療薬の開発も加速することにより、最適な治療ができる可能性も高まっていくものと期待されます。また、10%といえども、標準治療が終了し、今までは治療の選択肢が限られていた患者に対して、適した治療薬を見つけて治療を行うことができたということは画期的なことです。


1 「中医協 がん遺伝子パネル検査の保険適用56万円で了承 がんゲノム医療の扉開く!」(ミクスOnline 2019年5月30日)
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=67576

2 国立がんセンター中央病院「がんゲノム医療 よくある質問」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/genome/050/index.html

3 【地域別】がんゲノム医療を受けられる施設
https://gan-genome.jp/hospital/facilities.html

4 国立がんセンター中央病院「がんゲノム医療 当院での取組みの歴史」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/genome/top-gear-project/index.html

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