がん免疫療法コラム

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ビタミンDでがんの発現を予防できるか? <Part.2>

Part.1では「ビタミンD」と「がん予防」について見て来ましたが、今回はがん患者に対して「ビタミンD」がどのような効果を持ち合わせるのか、その可能性について見て行きたいと思います。
まず、「ビタミンD」と「免疫」との関係から始めましょう。

■ビタミンDと免疫の関係

□免疫細胞に対する効果

今までのところ、「ビタミンD」の「がん」に対する一貫性のあるエビデンスは集積されていませんが、「ビタミンD」の持つ可能性として「免疫」との関係に触れておきたいと思います。

「ビタミンD」には免疫機能を正常に機能させる効果があります。自然免疫系の「マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞」を強化するという研究結果が報告されています。また、T細胞やB細胞などの獲得免疫系については抑制的に働き、「免疫」の活性と抑制の両方に影響を及ぼし「免疫」の制御に役立っています。

 

□ビタミンDと免疫チェックポイント阻害剤

これは昨年発表された論文ですが、「ビタミンD」と「がん免疫療法」である「免疫チェックポイント阻害剤」との関連性が報告されています。

「ビタミンD」の血中濃度が低いと、ニボルマブ(オプジーボ)の血液中濃度も低く、逆に「ビタミンD」の濃度が高いとニボルマブの濃度も高いという結果が得られています。この研究は初期段階であり、さらなる研究の必要性を著者らも指摘していますが、「ビタミンD」の濃度が高ければ、高い薬効が得られる可能性を示唆しています。「ビタミンD」単独ではなく、他剤との組み合わせによって効果が発揮でれば、それでも十分価値があると言えるでしょう。

 

以上の通り、「ビタミンD」で「がん」を予防できるかという問いに関しては、一貫性のあるエビデンスは集積されていません。しかし、予防だけでなく、新たな治療法の可能性について検討され、それに関する研究が進められています。既に「がん」にかかっている患者を対象に、「がん」の進行や再発・転移に対する効果を検討している研究が世界中で行われており、「ビタミンD」による抑制効果を認めているものやその可能性を示唆した報告が集積しつつあります。また、先述のように併用により従来の治療法に対して良い影響を及ぼす可能性も示唆されています。

今般、医療費は増加の一途をたどり、薬価に関しても抗がん剤は高額なものが増えています。これに比べれば、「ビタミンD」は比較にならないほど安価です。従って、「ビタミンD」の効果が明らかになれば、これほど良い事はありません。「ビタミンD」と「がん」の発症リスク、進行の抑制や生存率の改善に関する研究の進展については、今後も注目すべきです。

「ビタミンD」は全身の細胞内に存在しており、その作用は多岐にわたります。これは飽くまで私見ですが、「ビタミンD」が人体の恒常性に寄与する度合いが高いのだとすれば、恒常性が破綻しかけており、「ビタミンD」が極端に欠乏している場合などに限り、その補充によって高い効果が得られる可能性があるのではないでしょうか。「がん」が進行し、「がん悪液質」の状態に陥っていれば、「ビタミンD」の濃度もかなり低くなっていることが予見されます。通常、血中の「ビタミンD濃度」が20ng/ml未満であると「ビタミンD欠乏症」と診断されます。この値よりもさらに低い場合には、サプリメントによる「ビタミンD」の補充を検討してみる価値はありそうです。

 

(参考文献)

  • 古川健司, ビタミンDとケトン食 最強のがん治療, 光文社新書
  • Jessica Cusato et al., Influence of Vitamin D in Advanced Non-Small Cell Lung Cancer Patients Treated with Nivolumab, Cancers(Basel), Jan; 11(1):125, 2019
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6357025/

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