がん免疫療法コラム
自分の力で免疫力をアップ、そして「がんに勝つ!」《腸内細菌の活用》
プロバイオティクスや腸内フローラという言葉はご存じでしょうか?最近、よく耳にすると言う方も多いのではないでしょうか。プロバイオティクスとは、腸内フローラのバランスを改善し、人体に良い影響をもたらす生きた微生物のことを言います。腸には種類にして100以上、数にして約100兆個とも言われる多種多様な腸内細菌が存在し、群をなして生息しています。その様子が「お花畑」のようだという例えから腸内フローラと名づけられました。このプロバイオティクスの持つ良い影響とは、腸内環境を改善したり、下痢や便秘を抑えたり、腸内の感染を予防することが挙げられますが、特筆すべきは免疫力を回復させることです。一体、この腸内細菌と腸の免疫とは、どのようなつながりがあるのでしょうか。まず、腸と免疫との関係について見ていきたいと思います。
■腸と免疫の関係
細菌などの病原体はどこから侵入するかを考えてみると、その多くは口から入ることは想像に難くないと思います。そして、実際、その口から入った病原体が、腸を通して体の中に入っていきます。しかし、簡単に病原体の侵入を許しては、体にとって一大事です。そこで病原体の侵入を防ぐための手段として、腸には免疫による防御の働きが備わったものと考えられています。この腸に存在する免疫機能を腸管免疫と言います。
■腸内細菌と免疫の関係
では、腸内細菌は腸管免疫に対し、どのような関わりを持っているのでしょうか?その詳細はまだ解明されていませんが、腸管の表面にある細胞が腸内細菌から情報を受け取り、腸管免疫を正常に保つように互いに連携していることが分かってきています。大腸がんを発現させたマウスを使った実験を行い、腸内フローラが白血球で産生される活性酸素を増やす働きを担っており、腸内フローラを持たない場合には抗がん剤による抗腫瘍効果が低下するという結果が報告されています1)。また、最近になり、腸内細菌の種類が多い人ほど免疫療法が効きやすいという興味深い報告もあります2)。その報告では、腸内細菌を上手に活用することが、がん免疫療法の効果を高める上で新たな手段となる可能性があると結んでいます。このように腸内細菌と免疫の密接な関係が明らかとなりつつあり、腸内細菌の有用性がクローズアップされています。
がんになる一つの要因として免疫の低下が挙げられ、多くのがん患者さんでは、健康な方と比べ免疫細胞が少なくなっていることが報告されています3)。腸内細菌を健全に保ち免疫機能を高めることは、がんの予防や克服の大きな助けとなる可能性を秘めており、患者さん自身でできる一つの免疫療法ではないかと思います。
参考文献
- Iida N et al: Science, 342, 967-970, 2013
- NCRI Press Release, 7 Nov. 2016
- Noguchi A et al: International Immunopharmacology, 18, 90-97, 2014
Vol.5