がん免疫療法コラム

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抗体の利用と抗体医薬品 【抗体とB細胞】 《Part.1》  

近年、注目を集める医薬品の1つとして「抗体医薬品(モノクローナル抗体医薬品)」が挙げられます。「抗体医薬品」とは、ある病気に関与する分子に対して特異的に結合する「抗体」を、遺伝子組換え技術等を用いて医薬品としたものです。1990年代に登場して以来、現在においてもその数は増え続け、日米欧で70品目を越える抗体医薬品(2019/5/1現在)が承認されています。

その多くは、「がん」や「自己免疫疾患」を対象としており、特にがんゲノム医療の推進に伴い、がん領域での「抗体医薬品」に対する注目度は高く、分子標的薬の一部や本コラムでも再三取り上げている免疫チェックポイント阻害剤もその1つです。今や、がん治療に関しては「抗体医薬品」は無くてはならない存在になっており、今後においてもこの傾向は変わらないでしょう。

そこで今回から数回にわたり、「抗体」の産生や働きなどの基礎的な話から「抗体医薬品」とはどのようなものなのかについて見て行きたいと思います。

■B細胞による抗体の産生と多様性

「抗体」は免疫グロブリンというタンパク質で出来ており、獲得免疫系の免疫細胞であるB細胞で作られます。ひとつのB細胞からは1種類の抗体しか産生されませんが、体内には多種多様な抗体が存在し、1000億種類以上にも及ぶと言われています。これは、つまり産生される「抗体」はほとんどのものが異なっていることを意味しています。

これほど多様な「抗体」の産生が可能なのは、B細胞が増殖および分化する過程で、「抗体」に対して遺伝子の組み換えが行われ、無数の組み合わせを作ることができるからです。中には同じ「抗体」を産生するB細胞もありますが、その数はごくわずかです。

このように生体内には様々な「抗体」が存在します。そのお蔭で、どのような異物にも対応することができるのです。

 

■抗体とB細胞の免疫記憶

体内に侵入した異物による攻撃でB細胞は活性化され、そして増殖します。しかし、その時に産生される「抗体」は量的に多くはありません。ところが、攻撃を受けたB細胞は「免疫記憶細胞」として体内に留まり、そのまま生き続けます。そして再度同じ異物による攻撃があった場合には、先の「免疫記憶細胞」が分化して「抗体」を大量に産生するようになります。この「免疫記憶細胞」の存在が、1回目に攻撃を受けた時よりも素早く、かつ大量に「抗体」を産生することを可能にしており、それによって異物からより速やか、より強力に身体を守ります。

 

以上のように「抗体」には多様な種類があり、様々な異物からの攻撃に対応します。また、ある異物から再度攻撃を受けた場合には、「免疫記憶細胞」を介して迅速かつ効果的に「抗体」が産生されるという特徴を持っています。

 

参考文献

 

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