がん免疫療法コラム

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多様な才能を持つまとめ役 ヘルパーT細胞 《Part.1》  

6種複合免疫療法の中で、本コラムではまだ説明していない免疫細胞があります。それは「ヘルパーT細胞(以下、Th細胞)」です。「Th細胞」は色々な免疫細胞と関わって、免疫を動かす重要な役割を担っています。人に例えるなら、色々な役者や演者を操る監督や指揮者みたいなものでしょうか。そして、異物との戦いにおいては、様々な部隊に対して命令を行う司令官的な役割を演じます。
まずは、その働きの全体像を見て行きながら、細部へと話しを進めて行きましょう。

■自然免疫と獲得免疫の双方をヘルプ

「Th細胞」は獲得免疫系の免疫細胞です。従って、始動開始には自然免疫系からのサインが必要です。まずは、あの「樹状細胞」からの異物発見の伝令が届きます。その伝令を受けた「Th細胞」は活性化され、そして増殖します。自分と同じ働きをする分身達を増やし、その分身達は体内のリンパ節や組織などに散らばって行きます。

本領の発揮はここからで、大きく分けて2通りの働きをします。
1つは自然免疫系の「マクロファージ」に対して特異的に再度活性化する働きと、獲得免疫系の「キラーT細胞」を活性化する働きです。つまり、異物に対して直接攻撃を行う免疫細胞に対して指令を与えます。
もう一方は、獲得免疫系の「B細胞」に働きかけて「抗体」を産生させる働きです(近々、「B細胞」と「抗体」の産生についてコラムに記載する予定です)。

免疫細胞の直接的な攻撃を中心とする前者を「細胞性免疫」と呼び、「抗体」の働きによる間接的な攻撃を中心とする後者を「液性免疫」と呼んでいます。
ちょっと言葉が堅苦しいのですが、この名称にお付き合い下さい。
まずは、「Th細胞」の「細胞性免疫」に対する働きを見て行きましょう。

◆「細胞性免疫」をヘルプ

□食細胞の再活性化

「樹状細胞」によって異物の存在の伝令を受け、活性化された「Th細胞」は体内を動き回ります。そこで伝令を受けた異物と同じ異物を食べた「マクロファージ」と出会うと、「Th細胞」はその「マクロファージ」を活性化します(特異的活性化)。つまり自然免疫である「樹状細胞」に活性化された獲得免疫が、お返しとばかりに自然免疫である「マクロファージ」を活性化します。このような自然免疫と獲得免疫の双方の連携が免疫の働きを支えています。それに「Th細胞」は一役買っています。

□「キラーT細胞」の活性化

「Th細胞」には、実はもう1つ重要な働きがあります。「キラーT細胞」の活性化には、「Th細胞」のヘルプを必要としています。「樹状細胞」だけでも「キラーT細胞」を活性化できるケースもありますが、「ヘルパーT細胞」がないと活性化されにくいことがわかっています。
「キラーT細胞」が活性化される際には、「キラーT細胞」と「Th細胞」が仲良く同じ「樹状細胞」に結合します。そして「Th細胞」がサイトカインという物質を出し、そのサイトカインを浴びて「キラーT細胞」が活性化します。

 

次回は「液性免疫」について見て行きたいと思います。また、「ヘルパーT細胞」は1種類だけではなく複数の仲間がいますので、これについても併せて見て行きたいと思います。

 

参考文献

  • 実験医学別冊 もっとよくわかる!免疫学, 河本宏, 羊土社
  • 新しい免疫入門, 審良静夫/黒崎知博, 講談社

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