がん免疫療法コラム

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制御性T細胞を抑制する薬剤 【補足】  Vol.34

前回、Tregを抑制する方法が色々と研究されている旨お伝えしましたが、簡単に紹介した程度でしたので、少し補足したいと思います。

今のところ制御性T細胞の除去により免疫抑制を解除、つまり制御性T細胞によるブレーキ機構の解除を主作用として「がん」の増殖を抑制する薬剤は認められていません。しかし、その候補として抗CCケモカイン受容体4(以下、CCR4)抗体とインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(以下、IDO)阻害薬の2種の薬剤が開発段階にあり、「がん免疫療法ガイドライン(第2版)」に免疫チェックポイント阻害剤以外の免疫抑制阻害薬として紹介されています。上市される可能性の高いものもあることから、この2つの薬剤に絞り、開発状況も交えながら見て行きたいと思います。

◆抗CCR4抗体薬

ケモカインとはサイトカインの仲間で、免疫細胞などが組織へ移動するのを助けたりする役目を担っています。CCR4という種類のケモカインレセプターが「がん細胞」では強く発現しており、これがTregを呼び寄せるため、「がん組織」にTregが集まって来ます。つまり、このCCR4の働きを止めればTregの集結が防げるため、結果としてTregによる免疫抑制を避けることが可能となります。そこでCCR4に対して阻害作用を持つ抗CCR4抗体を投与することにより、「がん」局所のTregを選択的に除去することが可能と考えられています。

モガムリズマブ(ポテリジオ)という抗CCR4抗体薬は、CCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫に適応を取得している日本発の薬剤です(抗体依存性細胞傷害による抗腫瘍効果が主作用)。この薬剤が免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ(オプジーボ)との併用で、固形がんに対して開発が進められていました。しかし、残念なことに、昨年、開発を主導している企業から、これら2剤の併用による開発を断念したとの発表がありました。想定した程の有効性が得られなかったようです。

◆IDO阻害剤

IDOは「がん組織」内で発現しており、Treg を活性化する作用が報告されています。しかし、IDOが直接Tregを誘導するのではありません。IDOが必須アミノ酸であるトリプトファンを代謝するとキヌレニンという物質が産生されます。このキヌレニンがTregを活性化します。そこでIDOの酵素活性を阻害する、またはIDOの発現自体を抑制する方法によりキヌレインの産生を抑制し、Tregが活性化されないようにします。現在、IDO阻害薬の単独、もしくは免疫チェックポイント阻害剤である抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体との併用などによる臨床試験が行われています。

海外では固形がんに対するIDO阻害薬であるエパカドスタットと抗PD-1抗体薬であるペンブロリズマブ(キイトルーダ)との併用療法が行われ、この併用療法が有効性、安全性に優れる可能性が示唆されるとした報告があります。また、本邦でも悪性黒色腫や膀胱がんを対象としたIDO阻害薬と抗PD-1抗体であるニボルマブ(オプジーボ)との併用療法による第Ⅲ相試験が行われています。

 

以上のように、固形がんに対する抗CCR4抗体薬の開発は少し難しい状況にあるようですが、IDO阻害剤は開発の最終段階にあり、承認取得および上市が待たれます。

 

参考文献

  • がん免疫療法ガイドライン(第2版), 第1章 6.免疫チェックポイント阻害剤以外の免疫抑制阻害薬
  • 実験医学増刊 がん免疫療法 腫瘍免疫学の最新知見から治療法のアップデートまで, Vol.34 No.12,  p113-121, Vo1.34 No.12 ,2016
  • 実験医学増刊 がん免疫療法 腫瘍免疫学の最新知見から治療法のアップデートまで, Vol.34 No.12,  p223-225, Vo1.34 No.12 ,2016
  • がんナビホームページ, 進行固形癌を対象とした抗CCR4抗体モガムリズマブとニボルマブの併用療法の開発が中止 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201810/558488.html
  • オンコロホームページ, 進行性固形がん患者に対するIDO阻害薬エパカドスタット+抗PD-1抗体薬キイトルーダ併用療法 https://oncolo.jp/news/181012y01
  • Answers News ホームページ, 【UPDATE】免疫チェックポイント阻害薬、抗PD-1/PD-L1/CTLA-4抗体 最新の国内開発状況まとめ https://answers.ten-navi.com/pharmanews/7342/
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