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がんになると貧血になりやすいのはなぜ? 貧血の症状や自分でできる対応策について解説
がんになると、病気の進行具合や治療の副作用によって、さまざまな症状を引き起こします。
貧血も、がんと深い関わりがある症状の一つです。貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が少なくなった状態のことを言います。
ヘモグロビンの量が低下すると、組織に十分な酸素が行き渡らなくなってしまい、めまい・立ちくらみ・動悸・息切れなど、貧血によるさまざまな不調が表れます。
今回は、がん患者やその家族に向けて、 貧血に関する情報を紹介します。貧血の症状や自分でできる対応策について解説しますので、ぜひ参考にご覧ください。
INDEX
がんになると貧血になりやすい理由
まずは、がんになると貧血になりやすい理由を紹介します。がんになると貧血になりやすい理由は、大きく2つに分けられます。「がんの症状によるもの」「がんの治療によるもの」の2つです。それぞれの貧血の特徴について、次章以降で解説します。
がんの症状による貧血
まずは、がんの症状による貧血について紹介します。
がんを患うと、がんの表面の粘膜が脆くなって出血したり、がん細胞が骨髄へ入り込んだりすることで貧血になりやすくなってしまいます。例えば、胃がんや大腸がんなど消化管などからの慢性的な出血により、鉄分が欠乏してしまうケースがあります。また、骨髄性白血病など血液がんでは、赤血球をうまく作れなくなってしまうため、貧血が生じます。
がんの治療による貧血
次に、がんの治療による貧血について紹介します。
がんの治療によって生じる貧血には、いくつかの要因があります。
- 化学療法や放射線療法による副作用
- 胃を切除した後の吸収障害
- 食事の量が減ったことによる栄養素不足
それぞれの要因について、次章以降で詳しく解説します。
化学療法や放射線療法による副作用
化学療法や放射線療法による副作用で、貧血を引き起こすこともあります。
がん治療のために化学療法や放射線療法を受けることも多くありますが、化学療法の抗がん剤や放射線療法の放射線は、がん細胞だけでなく他の正常な細胞にも作用してしまうことがあります。特に血液細胞を作っている骨髄は影響を受けやすいと言われています。
その結果、以下のような副作用が起こりやすくなり貧血になってしまいます。
- 血液細胞をつくる働きが低下する(骨髄抑制)
- 赤血球が普段よりも壊れやすくなる(溶血)
一般的に抗がん剤や放射線の治療が開始されてから、約1〜2週後に貧血の症状が起こりやすいと言われています。
胃を切除した後の吸収障害
胃がんなどで胃を切除した後も、貧血になりやすい傾向にあります。
胃を切除したことで、胃によって機能していたビタミンB12や鉄分の吸収ができなくなってしまうため、貧血が引き起こされます。ビタミンB12は、赤血球やヘモグロビンを作るために必要な成分であり、貧血に深く関わる成分です。
胃を全摘した人ほど、貧血になる可能性が高まります。また、手術直後はもちろん、手術から数年後に貧血になるケースもあるため、注意が必要です。
食事の量が減ったことによる栄養素不足
食事の量が減ったことによる栄養素不足によっても、貧血が引き起こされます。がん治療の副作用などで食欲不振になったり食事量が減ったりします。赤血球の材料となるタンパク質やビタミン類、鉄分などの必要な栄養素を摂取できないことによって貧血になることもあります。
食欲が無い場合でも、貧血を防ぐための栄養素は積極的に摂取しましょう。固形物で摂取することが難しい場合には、ジュースなどで補う方法もおすすめです。
貧血になると起こり得る症状
続いては、貧血になったときに起こり得る症状を紹介します。これらの症状はあくまで目安であり、個人差があります。
軽度の貧血(ヘモグロビンが正常の70%以下)の場合には、以下のような症状が引き起こされる可能性があります。
- 顔色が悪くなる
- まぶたの裏が白くなる
- 口の中全体の赤みが減る
など。
これらは、自身では自覚症状がないこともあります。周囲の人から指摘され、気づくこともあるでしょう。
次に、ヘモグロビンが正常の59%以下の貧血の場合を紹介します。ヘモグロビンが正常の59%以下の貧血では、以下のような症状が引き起こされる可能性があります。
- 心拍数が増加する
- 少し動くだけでも息切れする
など。
次に、ヘモグロビンが正常の40%以下の貧血の場合を紹介します。ヘモグロビンが正常の40%以下の貧血では、以下のような症状が引き起こされる可能性があります。
- 頭痛
- めまい
- 耳なり
- 集中力の低下
- 不眠
- 疲れやすい
- 手や足が冷える
など。
最後に、ヘモグロビンが正常の30%以下の貧血の場合を紹介します。
ヘモグロビンが正常の30%以下の貧血では、以下のような症状が引き起こされる可能性があります。
- 吐き気
- 食欲不振
など。
がんによる貧血の治療法
次に、がんによる貧血の治療法を紹介します。
前述した通り、がんによる貧血にはさまざまな原因が考えられます。
まずは医師とともに貧血になる原因を突き止めることが重要です。鉄剤・ビタミン剤での治療をして、さらに貧血の原因に合った改善策を取っていく方法が一般的です。
例えば、がんができた部位からの出血が原因の場合、止血剤の服用や手術による止血をします。抗がん剤や放射線による溶血が原因の場合、ステロイドを使用することで、貧血を防げるかもしれません。場合によっては医師の判断で輸血を行うこともあります。
自分でできる貧血の対応策
続いては、自分でできる貧血の対応策を紹介します。がん患者さんが自身ができる、がんによる貧血の対応策は以下の通りです。
- 貧血が起きたときはその場にしゃがむ
- ヘモグロビン値を把握する
- 食事を工夫する
- こまめに休憩する
- できる範囲で運動やマッサージを行う
- 手洗い・うがいを欠かさない
- 周囲の人にサポートしてもらう
- 貧血の症状が出たら医師に伝える
次章以降で、各対応策について詳しく見ていきましょう。
貧血が起きたときはその場にしゃがむ
自分でできる貧血の対応策1つ目は、貧血が起きたときはその場にしゃがむことです。
貧血が起きたときの対処法として、すぐにその場にしゃがみ、落ち着くまで動かずに様子をみるようにしましょう。貧血が起きたときに無理に動くと転倒や落下など、事故につながりやすいため注意が必要です。
薬物療法などによって貧血と血小板の減少が重なっているタイミングは特に危険です。事故を起こすと致命的な出血になる可能性もあることを念頭に置きましょう。万が一のことを考え手すりを使ったり、道路は車道側ではない方を歩いたりすることがおすすめです。
ヘモグロビン値を把握する
自分でできる貧血の対応策2つ目は、ヘモグロビン値を把握することです。
自分自身の血液データのヘモグロビン値を把握しておくことで、貧血の対策を講じることができます。貧血の兆候が現れている場合には、無理をしないで休むなど、貧血の症状が起きないように調整しましょう。
食事を工夫する
自分でできる貧血の対応策3つ目は、食事を工夫することです。
食事を工夫することで、徐々に貧血の症状改善を目指せます。
貧血の際には、以下の食事のポイントを心がけましょう。
- 主食、主菜、副菜など品目を増やす
- バランスの取れた食事を心がける
- 鉄分(豆類・レバー・ひじき・小松菜など)を摂取する
- ビタミンC(野菜・果物など)を鉄分と同時に摂取する
- 動物性たんぱく質(肉・魚・卵・乳製品など)を摂取する
- ビタミンB12(肉・卵・牛乳・魚など)を摂取する
- 葉酸(海藻・肉・枝豆・モロヘイヤなど)を摂取する
- タンニンを含む食品(緑茶・紅茶・コーヒーなど)はなるべく避ける
貧血改善におすすめのレシピ
貧血改善におすすめのレシピを2つ紹介します。
「具だくさんスープとライ麦パンスティック」は、貧血改善効果が期待できます。
材料は以下の通りです。約2人分の量の目安です。
- じゃがいも:小2分の1個
- にんじん:10グラム
- 玉ねぎ:20グラム
- 黄パプリカ:10グラム
- パセリ:10グラム
- ダイストマト缶:60グラム
- 水:2分の1カップ
- コンソメ顆粒:小さじ1
- 塩:少々
- こしょう:少々
- ライ麦パン:3分の2枚
「具だくさんスープとライ麦パンスティック」のレシピは以下の通りです。
- じゃがいも、にんじんの皮をむく
- じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、パプリカを1センチメートルの角切りにする
- パセリをフライパンで乾煎りする
- 鍋にダイストマト缶、水、じゃがいも、にんじんを入れ火にかける
- 火が通ったら玉ねぎ、パプリカを入れ、ひと煮立ちさせる
- コンソメ顆粒、塩、こしょうを入れ、味を整える
- ライ麦パンを焼き、お好みの長さに切る
盛り付けたら完成です。
(参考:国立がん研究センター 東病院 具だくさんスープとライ麦パンスティック)
2つ目のレシピは、「鉄分たっぷり変わりビビンバ」です。「鉄分たっぷり変わりビビンバ」に必要な材料は以下の通りです。約2人分の量の目安です。
- 精白米:100グラム
- 牛ももスライス:80グラム
- 焼き肉のタレ:大さじ1
- サラダ油:小さじ1
- 小松菜:1株
- 切干大根(乾燥):10グラム
- 赤パプリカ:20グラム
- A 中華だし顆粒:小さじ1
- A 寿司酢:小さじ1.5
- A ごま油:小さじ1.5
- きざみのり:適量
- 白炒りごま:適量
- コチュジャン:適量
「鉄分たっぷり変わりビビンバ」のレシピは以下の通りです。
- 精白米を炊く
- 牛ももスライスを一口大に切る
- 牛ももスライスに焼き肉のタレをもみ込んで10分程度漬けこむ
- フライパンに油をひき、牛ももスライスを炒める
- 小松菜を塩茹でして、冷水にさらす。水気を絞り3センチメートル程度に切る
- パプリカも3センチメートル程度に千切りする
- 切干大根は水で戻し、3センチメートル程度に切る
- ボウルにAの調味料を入れよく混ぜ合わせる
- 調味料を3等分にしそれぞれに小松菜、パプリカ、切り干し大根を入れよく和える。
- 丼ぶりにご飯を盛り、牛ももスライス、小松菜、パプリカ、切り干し大根を盛り付ける。
- 上からきざみのり、白炒りごまを散らす
コチュジャンはお好みでご使用ください。
(参考:国立がん研究センター 東病院 鉄分たっぷり変わりビビンバ)
こまめに休憩する
自分でできる貧血の対応策4つ目は、こまめに休憩することです。疲れたときは楽な姿勢で休憩しましょう。
日中はこまめに休憩すると疲労回復や気分転換になります。外出後も、何か行動する前に休憩をとることを心がけてください。
できる範囲で運動やマッサージを行う
自分でできる貧血の対応策5つ目は、できる範囲で運動やマッサージを行うことです。軽い運動やストレッチ、マッサージをすることで貧血のだるさを軽減できる可能性があります。体に負担をかけないよう、無理をせずにできる範囲で行うことが大切です。
手洗い・うがいを欠かさない
自分でできる貧血の対応策6つ目は、手洗い・うがいを欠かさないことです。\貧血になると、体内で酸素はもちろんのこと栄養分も行き届かなくなる可能性があります。
抵抗力が低下するため、こまめに手洗いやうがいを行うようにして、感染予防しましょう。
周囲の人にサポートしてもらう
自分でできる貧血の対応策7つ目は、周囲の人にサポートしてもらうことです。
貧血でふらついたり、日常生活を送りづらかったりする場合は、周囲の人にサポートしてもらうことが大切です。がん患者の方の家族や友人などは、患者の方が貧血でふらついていたり、困っていたりしないか、見守るようにしましょう。
貧血の症状が出たら医師に伝える
自分でできる貧血の対応策8つ目は、貧血の症状が出たら医師に伝えることです。貧血の症状が出たときは、具体的にどのような症状が起きたのか記録をして、医師に伝えることが重要です。
めまい・ふらつき・立ちくらみなどの他にも、手足のしびれ・血便、月経ではない時期や閉経後の出血・嘔吐などの症状が出たら貧血の可能性もあります。
まとめ
今回は、がんになると貧血になりやすい理由について紹介しました。
貧血を防ぐためには、症状や自分でできる対応策について理解を深めることが重要です。貧血の症状が出たら医師に相談し、適切な対応をしましょう。
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